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2月26日(木)

【思ったこと】

980226(木)
[教育]大学入試前と入学後における語学教育のあり方
 昨日の愛媛大学法文学部の前期試験の小論文では、「大学入試で英語を課すことについて、賛成・反対を明記したうえで根拠を挙げて自分の意見を五百字以内で書く」という問題が出題されたという。今日は、これを含めて、語学教育の問題をちょっと考えてみたいと思う。
 まず、もし私が受験生だったらどうするかと言えば、たぶん賛成論の立場で意見をまとめることになると思う。しばしば受験英語などと言われて批判されているが、英語の文章を理解したり自分で書き表す力自体は、大学で研究を進める上で必要な学力であって決して無駄にならない。例えば今年度の京大の英語和訳問題で出題されている程度の英文(特に1.の生物進化の話など)が読めないようでは心理学の原書を理解することができない。和文英訳問題もごく平易な文章であり、この程度が英語で表せないようでは困る。
 1/23の日記でも書いたように、センター試験で私が受験生よりよい点が取れそうなのは英語ぐらいなものだ。逆に言えば、日常的に英語を必要としているから学力が保持されているのである。英語不要論を説くぐらいならば、むしろ、数学、理科、地歴・公民、古文・漢文などで、受験終了後半年以内にすっかり忘れてしまうような科目を減らしたほうが、遙かに負担軽減につながると思う。

 私がむしろ必要性を感じないのが、大学の一般教育での英語だ。前にも日記に書いたことがあるけれど、私自身が学生の頃の英語と言えば、D.H.ロレンスとか、H.ジェームズといった作品についての英文学的な解説が中心であり、それはそれで教養にはなったけれど、専門の勉強にも、英語の論文書きにも、あるいは外国人研究者との会話にも何のプラスにもならなかった。どうせ授業として開講するならば、英語の授業としてではなく英文学の授業として選択科目にしてほしかったと思う。
 私の学生の頃は、まだ第二外国語が必修になっていた。私は、文字の面白さにひかれてロシア語を選択したが、旧ソ連のシベリア鉄道や中央アジアシルクロード旅行の時に買い物で役だったぐらいのもので、その後の研究では何ひとつ読むべき文献がなかった。

 似たような疑問をもつ人は他にも多いらしく、近年の多くの国立大学で行われている教養部解体・改組の動きも、その大きな柱の1つが語学教育の改善をめざしたものであったように思う。もっとも現実には、語学教育自体を改善するというよりも、文学系的な語学教育を改め、第二外国語を必修から外し、それによって余った英独仏文学系の教官のポストを新学部設置のポストに振り替えるというのが大勢であるようだ。
 教養部解体・環境理工学部新設・文学部改組という3点セットの改革の話が始まった当初は、私は、大学での語学教育の充実を主張していた。しかし議論が深まるなかで、次第に、語学センター的な語学教育プロフェッショナル教官の配置には必要性を感じなくなってきた。まず、いまの時代、第二外国語の勉強に精を出すよりは、英語だけでもきっちりやっておいたほうがよい。そして、その英語も、週に2コマ程度の授業を教室で受ける程度ではダメで、むしろば数ヶ月程度の留学とか、CD-ROMなどマルチメディアを活用した多角的な勉強で身につけるほうが効果的ではないかと思うようになったのである。そこで、改組の最終段階では、私自身は、語学センターの設置には反対の意見を表明した。

 そもそも英語なんていうものは、100点満点のテストで全員が90点以上をとって大学に入ってくるべきものである。車の免許の時のペーパーテストと一緒である。冒頭に、「もし私が受験生だったら、大学入試の受験科目に英語を課すことに賛成論の立場から意見を述べるであろう」というようなことを書いたが、思い直してみれば、英語で総合点に差がつくようでは困る。差がつくということは、高校までの英語教育が不十分であることの表れであり、ペーパーテストで50点、60点の者にも車の免許を与えるようなものである。
 こう考えてみると、むしろ、諸々の英語検定試験を充実させておいて、一定の基準を満たすことを合格の必須条件とし、その代わりに受験科目から外すということのほうが効果が大きいかもしれないと思う。

 それにしても、中学以来6年間、さらに大学に入って何時間も英語を学びながら、国際会議で自由に意見を発表できないというのは、(自分を含めて)辛いところだ。この根本はどこにあるのだろうか。おそらく、語学教育の欠陥というよりも、日本語と英語という2つの記号系を並列処理することの難しさにあるのではないかと思う。
 コンピュータ言語の習得過程と同じように、自分の生成した言語反応に個別的に確実な結果を随伴させていくようなオンラインの教育システムが作られれば、今よりいくらかは改善されるのではないかと思う。例えば、自分が思った通りの英文を入力すると、コンピュータがそれを直ちに正しい表現に修正してくれる。できあいの英作文問題ではなく、自分が自発した英文を添削してくれるようになれば、英語力は飛躍的に伸びるのではないかと思う。(←もっとも、そこまで学習システムが充実した時代には、日常表現の大部分は機械翻訳だけで済むようになり、英語を学ぶ必要はなくなってくるかもしれない)。
【ちょっと思ったこと】
  • 昨日の日記で「サロンパス」と書いたが、これはもちろん商品名である。セロテープやシャープペン、マジック、ホッチキスなど、特定のメーカーの商品名が類似商品全体の代名詞となる例は少なくない。こうしたなかで、人によって呼称がマチマチで面白いなあと思うのが「カットバン」、「バンドエイド」、「キズテープ」といった、「ポリネット・パッド付救急絆創膏」である。我が家では「カットバン」で統一されているようだが、相手の使う呼称に合わせることも多いように思う。
  • このほか、かならずしも特定の商品名が代名詞化していないと思われるものに、使い捨てカイロ(我が家では「ホッカイロ」と呼んでいるが)、噴霧式殺虫剤(「キンチョール」など)がありそうだ。
【新しく知ったこと】
【リンク情報】
【生活記録】
【家族の出来事】
【スクラップブック(翌日朝まで)】
※“..”は原文そのまま。他は長谷川による要約メモ。【 】は長谷川によるコメント。誤記もありうるので、言及される場合は必ず元記事を確認してください。
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