【思ったこと】980410(金)
[心理]心理学の実験で分かること分からないこと(3)実験操作や結論導出は、実験のタイプによってどう変わるか。 昨日の日記で、実験のタイプを4通りに分類した。 (a)ある要因の関与を確認するための実験(「質的」実験) (b)ある要因の関与の度合いを量的に決定するための実験(「量的」実験) (c)広く支持されている法則に対してそれが成り立たない事例を示す実験(「反証」実験) (d)ある法則の及ぶ範囲を広げ、確定するための実験(「範囲確定」実験) これらのタイプの違いによって、実験操作のあり方や結論の導き方は大きく変わってくるはずである。 (a)のタイプでは、とりあえず特定の要因が関与している可能性を示せばよいのであるから、操作する変数の値は、実験者が最も都合のよいように、つまり最も結果が出やすいように定めてもかまわないことになる。朝顔の例でも、水を全く与えない条件に対して、経験的に知られている最適の量の水を与える条件を比較すれば研究の目的は達成される。このタイプの実験から導き出される最も控えめな結論は、「当該の研究対象において、設定された条件のもとで、当該の変数がある値をとることは、その現象の必要原因となっている」というところであろう。朝顔の例で言えば、「朝顔のこの品種において、一定の量の水を一定回数与えることは、生育の必要条件である」というのが妥当な結論ということになる。 (b)のタイプは、独立変数(ここでは実験者によって操作される変数)と従属変数(観測される変数)のあいだの関数関係を決定するような場合をいう。(a)では、独立変数の値は、実験者の都合に合わせて選ぶことができたが、(b)では、独立変数の値は、常識的な範囲でなるべく細かく設定しなければ精密な関数関係は得られない。但し、ハレ[ハレ, R.著 小出昭一郎・竹内敬人・八杉貞雄(訳) (1984). 世界を変えた20の科学実験. 産業図書. p.8]が、温度と体積の間の関数関係を例にとって指摘しているように、いくら独立変数の値を細切れに設定したとしても、その隙間の部分で従属変数がどのような値をとるか、つまり直線的に変化するか三角関数のように揺れ動くかといった可能性は無数にある。関数の質について何らかの理論的裏付けがない限りは、実験データだけから帰納的に関数関係を決定することは原理的に不可能であると言わねばならない。 (c)の反証実験は、一例でも反例を示せばよいわけであるから、当該の法則が及ぶと考えられている範囲の中から、実験者に最も都合のよい値を選んでも構わない。ここで導き出される最も控えめな結論は、「当該の法則が及ぶと考えられていた範囲の中でも、その法則は必ずしも成り立たないことがある」ということになる。 (d)は多数の実験の積み重ねの中で地道に発展を重ねるタイプであり、1つの実験から得られる結論はきわめて控えめなものとなる。つまり「今回の実験によって、当該の法則は、○○という条件でも成り立つことが確認された」というのが妥当な結論であろう。 以上に述べた実験のタイプと結論の導出の問題は、仮説演繹の手続に基づく検証実験と、帰納法的な手法という論理学、哲学の問題へと必然的に発展するものであるが、今回のシリーズではこれ以上立ち入らないこととしたい。但し、仮説演繹的、あるいは仮説検証法的実験が、果たして生産的な心理学研究をもたらすかどうかについては、いずれ別のシリーズで改めて論じることとにしたい。 <以下、不定期更新で続く> |
【ちょっと思ったこと】980411(土)
[一般]郵便貯金で大儲けする方法の是非 4/11の朝日新聞朝刊に「郵貯『奥の手』封じられる!!」という見出しの記事があった。何のことかと思って読んでみて驚いた。世の中には思いも寄らない奥の手があるようだ。 その1つは、1ヶ月ものの百万円定期を「千円千口」で預け入れる方法。これをそのまま1年間据え置くと、本来年利0.3%の利息が年利1.2%に跳ね上がる。そのからくりは「国の債務計算の方法が『一銭以上なら一円に切り上げる』という法律を「活用」することにある。つまり、細切れに利息を稼ぐと、一銭の利子が自動継続時にみな一円に切り上げられ、合計利息が莫大にふくれあがる、というものだ。 この記事では、さらにもの凄い奥の手が紹介されていた。これは、利息が一銭以上になる4日目ごとに出し入れを繰り返すという方法で、新聞では最高どのぐらいの利率になるのか明記されていないが、おそらく預け入れ限度額いっぱいになるまで利息を稼ぐことができるはずである。 このうち、4日ごとに預ける「活用」法に対しては、来月から、中途解約の場合に「一銭以上を一円」に切り上げられる方式を「十銭以上を一円」というように省令を改正するそうなので、これまでどおりの大儲けは不可能となる。といっても切り上げ条項がある限りは、利率は減っても何らかの裏技が可能であるように思う。もうひとつ、来年1月からは口数をまとめて申し込める制度を廃止するということなので「千円千口」のメリットは無くなるというが、窓口で千回手続を繰り返せば、今まで通りの1.2%は保証されることになる。 この種の奥の手は昔からいろいろあったようだ。私自身、学生時代の頃は、「郵便普通貯金+銀行預金」併用型の利殖法というのを自力で発見して多少その恩恵にあずかったことがある。当時は、普通貯金の利息は、毎月15日(16日だったかもしれない)から月末まで出し入れがない時に限って、その額全体に1カ月分の利息がつくことになっていたと記憶している。そこで、月初めに全額引き出して、銀行預金に移し替える。14日頃に、それを再び郵貯に移し替えるというものだ。まあ、たいした利殖にはならないが、それでも当時は郵貯が4%、銀行が2%ぐらいの利率だったので、郵貯の1カ月分まるまるの利息に、半月分の銀行利息の上乗せが期待できた。その後、コンピュータによる計算方式に切り替えられ、郵貯の利息計算が日割り計算に切り替えられたため、このささやかな「裏技」は不可能となった。 新聞に紹介された「裏技」だが、その是非について、今の時点で思っていることを述べたい。 まず、これらは完全に合法的な活用法であり、特定個人に迷惑を及ぼすものではないから、それで大儲けした人がいたからといって、脱税のような違法行為と同じように非難されることはなかろうと思う。ただ、国家全体のレベルで考えれば、特定個人に多額の利息を支払うということは、郵貯の収支をそれだけ悪化させ、全体の利率を低めに押し下げる圧力となる恐れがある。また、「まっとうな」やり方で貯金をしている人々に不公平感を与え、郵貯行政に対する不信感を増大させるであろう。さらには、4日ごとの出し入れなどをすることは、郵貯事務に負担をかけ、窓口の待ち時間を長くして他の利用者に迷惑をかけることにもつながる。 もうひとつ、個人の側からこの「裏技」を使う場合にピットフォールはないかどうか考えてみる。1つは、郵貯には預け入れ限度額があるから、この方式で儲かる額は無制限ではなかろうということ。それと、少なくとも都市部の郵便局では、1回の利用で10分以上待たされることがある。往復の時間を考えると、ただ利殖のためだけに4日ごとに郵便局に通うほど暇な人はそうはあるまいという気がする。 ※ネット上でこの種の「裏技」に言及することには多少とまどいを感じたが、新聞記事にその全容が公開されたので、むしろこれを機会に積極的な議論が必要と考え、取り上げることにした。 |
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