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昨日の日記

5月21日(木)

【ちょっと思ったこと】
980521(木)[政治]民主主義は何のためにあるか(2):スハルト大統領辞任
 インドネシアのスハルト大統領が21日辞任し、32年間の長期政権に終止符が打たれた。と言っても、後継者にはハビビ副大統領が指名され2003年まで任期を引き継ぐということなので、支配権力構造には何の変化も見られない。スハルト氏個人に照準を合わせて改革を求めてきた人たちは、ひとまず歓声をあげるだろうが、真の改革が実現するかどうかはこれからの課題であろう。

 どの国のどの時代をみても言えることだと思うが、「政権」と「政治の支配権力構造」は必ずしも一致しない。例えば軍人の一部がクーデターを起こせば一時的に政権をとれるかもしれないが、それを容認する権力基盤が弱ければすぐに打倒される。議会制民主主義が徹底している国であっても同様だ。現体制に批判的な候補が大統領に当選したからといって、それだけで支配構造が変わるわけではない。

 中学や高校の社会科関連の授業では、どうもこういうことを教わらなかったような気がしてならない。特に民主主義についての説明に入ると、国民主権とか、国民全体の手で政権が作られるというようなところが強調されすぎて、支配構造の仕組みがちっとも明らかにされない。成人ひとりひとりに政権を作るための権利は与えられ、現政権を批判する自由も与えられていることは確かだとしても、だからといって、現政権が国民の総意のもとに作られているわけではない。民主国家というのは、政権を作ったり辞めさせたりするための手続が民主的という意味であって、政治の支配構造が民主的という意味では決してないということにもっと気づく必要があるように思う。

 ところで最初の話題に戻るが、インドネシアの場合にも、スハルト氏個人が好き勝手に自分の利益だけを享受してきたわけではない。その側近や一族を中心として「開発独裁体制」という形で私腹を肥やす人々がおり、まさにそれが支配権力構造を形作っていたわけだ。インドネシアの場合、単に国内の産業を支配していたということでなく、外国からの途上国援助が一族を太らせていたという。そして、驚くべきことに、日本が外国に援助を与えている国の中で最大の国がインドネシア、インドネシア側からみても、受け取る援助額の7割近くは日本からのものであるという。援助の効果が究極的に日本の国益にかなうものであったとしても、これでよかったものか問い直してみる時期にきているように思う。

 大規模な民衆運動というのは、綿密に組み立てられた理論に基づいて整然と行使されるものではない。日常生活の遂行が困難になったり、あるいは権力に従う許容範囲を越えるような混乱状況が続いたもとで、「わかりやすい理論」というか究極的には「わかりやすい合言葉」が形成され、そのもとに団結した運動が生まれていくものである。それゆえ、本質的には支配構造そのものを変えなければ解決しないような問題があっても、「分かりやすい理論」の照準は支配者個人や政治制度に向かいやすい。「○○政権打倒」とか「民主化要求」というのがそれである。それはそれでやむを得ないことであるが、個人のクビをすげかえても経済は変わらないし、政治を民主化しても支配構造が変わらなければ5月18日の日記で述べたように、「暴動回避装置」が設置されただけに終わってしまう恐れもある。以下、不定期連載として続く。
【ちょっと思ったこと】
【新しく知ったこと】
【リンク情報】
【生活記録】
  • 5/21夕刻 「イリジウム50」を眺めることに成功。20時51分頃、北東の空40度ぐらいの高さに一等星ぐらいで移動する光点を発見。急速に明るさを増し、20時52分頃にはマイナス2等星ぐらいまでに達するが、その後急速に暗くなり20時52分30秒頃に東の空高い位置で消えた。
    イリちゃんの情報は、こちらにあります。
  • 5/22早朝、東の空に、金星、月、木星を見る。金星と木星の見かけの間隔は、腕を伸ばした状態で握りこぶし二個分。その真ん中あたりに三日月を逆さにした形の月が見えた。
    <追記>先月23日に、金星と木星が相次いで月に隠される「ダブル惑星食」が海外で観測された。こちらにある。英語を読んでいるだけでもその感動が伝わってくる。なお、このサイト情報は、怪鳥さんのページに紹介されていたものの孫引き。
【家族の出来事】
【スクラップブック(翌日朝まで)】