じぶん更新日記1997年5月6日開設Y.Hasegawa |
キノコ3兄弟。数日前に公開したノウタケの仲間と違って、構内至る所で見られるキノコ。たぶんシバフタケ(芝生茸)。 |
【思ったこと】
990629(火)[心理]分かるとは何か(1):違いが分かるとは? 火曜日の午後に2コマ続きで開講されている「心理学研究法1」の私の分担がやっと終わった。この授業は、5名の教官が心理学の基礎的な実験法や調査法などを指導する実習形式の授業であり、私は6月の5週分を担当した。 ここ数年、私の担当では「ハムスターの明暗弁別学習」がテーマとなっている。弁別とはひとくちで言えば「違いが分かる」ということ。これを機会に、不定期連載で「分かるとは何か」について考えてみることにしたい。1回目は、ハムスターにとって明暗の違いが分かるとはどういうことかという話題。 今回の実験は、ハムスターを実験箱に入れ、照明(40W白熱球)が明るい時はレバーを5回押すと餌が出現、一方、暗い時(消灯時)にはレバーを何回押しても餌がでないという設定。明と暗の条件は30秒ごとにランダムに入れ替わる。 ここで「違いが分かる」とは、明るい時にはたくさんレバーを押し、暗い時には全くレバーを押さなくなるような行動が形成されることが必要条件となる。仮に、1日のセッション中、照明点灯時に200回、消灯時に50回のレバー押しがあったとすると、ほぼ弁別ができていると判断されることになる。 しかし単に2条件で押し方に違いがあっただけでは弁別の証拠とはならない。たとえば目の見えない個体がレバーを押したとする。「レバーを5回押しても餌が出ないときはしばらく休憩、5回押して餌が出た時はそのままレバーを押し続ける」という方略をとれば結果的に押し方に違いが出てくる(※この方略を阻止するには「5回押したら必ず餌(FR5)」という条件を「いつ餌が出るかはランダムだが平均5回押したら餌(VR5)」に変更する方法がある)。 次に、「明るい時にレバーを押す」という行動が、「暗→明」という刺激変化を手がかりとして生じるのか、明るい状態が継続している時にずっと押し続けるものなのかをチェックする必要がある。これは、実際の反応の推移を見れば把握できる。 さらに、相対的に明るい条件のもとでレバーを押すのか、それとも40Wという特定の明るさでレバーを押すようになるのかも確認していく必要がある。これは、「消灯か、40W点灯か」という条件に「40W点灯か、100W点灯か」というような条件を加えることである程度チェックできる。40Wという固有の明るさに反応しているのであれば、「40W点灯 VS 100W点灯」では40Wのほうでたくさん反応するであろう。 本来「違い」というのはいろいろな次元で多様に生じるものである。実験者はある次元についての違いを設定したつもりでも、被験体は全く別の実験や特徴に注目して反応している可能性がある。例えば被験体が「●」と「▲」の違いを区別しているように見えても、実は、図形の下部の黒の比率が多いということだけに反応している可能性だってある。「計算が出来る馬」などという見せ物はこれを逆に利用したものであり、観客が気づかないような別の手がかりで反応を区別させているのだ。 人間の場合はあらかじめ言葉で違いを説明してしまうので上に述べたような「誤解」が生じる可能性はより小さいが、それだけに万が一「思い違い」や「取り違え」があったときは深刻な事態を招きかねない。自分が注目している違いと相手が注目している違いが本当に同じ次元のものであるのか、常に注意を怠らないことが肝要だ。動物実験を体験することはそうした思考訓練にも繋がると自負している。 |
【ちょっと思ったこと】
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【新しく知ったこと】
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【生活記録】
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【5LDKKG作業】
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【スクラップブック(翌日朝まで、“ ”部分は原文そのまま。他は長谷川による要約。)】
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