じぶん更新日記1999年5月6日開設Y.Hasegawa |
黄色い絨毯。農学部東西通りにて。 |
【思ったこと】 991206(月)[心理]生きがい本の行動分析(7):気持ちが楽になる50のヒント(後編)アナロジーを多用した非合理的思考による励まし 昨日の日記の続き。この本は題名が示すように、気持ちを楽にするためのヒントが記されている。「楽にする」というからには、今は楽でないことが前提。何かに失敗して落ち込んでいたり、行き詰まっていたり、迷っていたり....こういう状態を軽減し、前向きの姿勢を取り戻すことを意図しているようだ。昨日も述べたように「生きがい本」というよりは「慰め本」、「励まし本」の部類に近い。 ところで、慰めや励ましのための有効な方策の1つとしては論理療法(例えば『論理療法入門 その理論と実際』、ドライデン著、國分ほか訳、1998、川島書店)が知られている。論理療法はアルバート・エリスという臨床心理学者によって1955年に創始された心理療法の1つであり「非合理的、非論理的な思いこみや価値観を変容し、自己実現を促進する...」(川島書店『論理療法に学ぶ』紹介文より)あるいは「論理的な思考法を用いることによって、非合理的な感情をコントロールし、自分自身も、人もまた幸せにする心理学」(『落ち込みから立ち直る「ほめ言葉」の事典、広野、1995年、ソーテック社)という特徴をもっている。ただし、ここで論理療法全般にふれるのは問題が大きすぎる。それについては別の連載として後日あらためて考察することにしたい。 本書にも論理療法的な記述は多々見られるが、むしろアナロジーを多用し、フィーリングで気分を直そうとしているところがあるように見える。場合によっては、「論理的思考を停止し、非合理的なアナロジーによって、とりあえず現状から立ち直る」という手法も取り入れられているようだ。 例えば「人生は、神様が作ったジェットコースター。事故が起こるようなら、神様は営業停止になるはずだ。」(p.46)という文言は、科学的、論理的には何の根拠もない。しかし本人が(1)人生は神様が設計したものだ、(2)神様が事故を起こすような設計をするはずはない、(3)機械よりも設計者を信じれば怖さは克服できる...というように納得さえしてしまえば、当面の不確定な将来に対する不安を解消することができる。 同じような手法は他にも多々見受けられる。もう1つだけ例を挙げれば、「ペンギンだって交代で寒い風上に立っている。仲間を救うことが自分を救う最良の方法」(p.70)。これも、ペンギンの行動を動物行動学的に分析して引き出された結論ではない。(1)ペンギンは交代で風上に立つ、(2)人間はペンギンよりも優れた動物である、(3)あのペンギンでさえ交代で風上に立つのだから、人間であるわたしも進んで損な役を引き受けよう....という形で納得をさせようとするものだ。 以上、あまり行動分析的視点を含まない感想になってしまったが、この手のアナロジー的な慰めは、合理性を追求すればするほどボロが出てくる。理屈っぽい人間には通用しないかもしれない。しかし、本当に落ち込んだ者が、その状態で合理的な思考に徹することができるとは思えない。とりあえず元気を取り戻すために、何か心の琴線にふれるようなアナロジーがあったほうが良い場合もあるだろう。昔の歌謡曲に「今はもう秋、誰も居ない海...」という歌があった。正確な歌詞は忘れたが、「悲しくても悲しくても、死にはしない。海と約束したのだから」という内容であったと思う。これも同じような発想だろう。 |
【ちょっと思ったこと】
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【本日の畑仕事】
夜、レタスを収穫。 |
【スクラップブック】
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