970620(金)
[心理]血液型と性格をまじめに考える(4)
初めに、昨日の「病院問題」の解答から。正解は小病院である。“サンプルが小さいと比率のバラツキが大きくなる”というのが統計の基本法則だ。じっさい、どのくらいの確率で、男の子が6割を超えるか計算してみると、15人の小病院では、おおむね15%、45人の大病院では、おおむね9%という値が出てくる(但し、これらは、毎日の出生数が、きっちり15人あるいは45人である場合の値。実際には、例えば小病院の場合、5人とか20人という日もあるので、そのバラツキの度合いによって多少値が変わってくる)。
この問題は、けっこう易しそうに見えるが、カーネマンたちの調査では、解答者50名のうち正解を出したのは10名だけで、28名はどちらの病院もほとんど同じ、12名は大病院であると答えたという。このように、サンプルのサイズの問題は、直感的には捉えにくい現象であることがわかる。言い換えれば、人々は、比率の大きさだけに注目しやすい。サンプルが10人でも50人でも、ほんらい半々になるものが6割に達していれば、同じ程度に奇妙な偏りがあると錯覚してしまう傾向があるのだ。
総理大臣経験者、大相撲横綱、オリンピック金メダリスト、ノーベル賞受賞者・・・こういう人々の血液型の偏りは興味深い話題であろう。しかし、これらの該当者はもともと人数が少ない。人数の少なさを無視して比率の偏りばかりに目を向けさせるところに、血液型性格判断のトリックの1つがある。
同じ比率でも、ある比率が予想より大きいとか小さいという判断なら、我々の目はまだ確かだろう。しかし血液型の場合には、もとの比率が4:3:2:1というように複雑になっている。こういう比率の偏りは、カイ2乗検定という方法で統計的に検定することができる。とはいえ、カイ2乗検定は、暗算ではできない。ちょっと見ただけで、それが意味のある偏りなのか、それとも偶然なのか、直感的に判断することは殆ど不可能だろう。