970623(月)
[心理]血液型と性格をまじめに考える(6)
21日(土)の記事で、
もうひとつ、先日のTV番組では、プロ野球の優秀選手の血液型比率をとりあげていた。それによると、優秀投手の血液型には偏りがなかったが、優秀打者について調べてみたところ、最多本塁打、生涯通算安打、生涯通算打点のTop10は、いずれも殆どがB型とO型であったという。1つならともかく、本塁打、安打、打点のどれをとっても偏りがあるのだから、これこそ、血液型人間学が正しいことの証明だ、と考える人も多いかもしれない。しかし、ここには少なくとも3つないし4つのトリックが潜んでいる。
と、書いた。これに対しては、日記猿人に参加されているよろずやさんから、ご解答をいただいた。私が想定していた解答も、ほぼ同じ内容であった。
- 第一のトリックは、このシリーズの第3回、第4回で指摘した問題点、つまり“サンプル”のサイズがわずか10人であり、小さすぎるということである。Top20でもTop30でも同じなような傾向が現れるのか、なぜTop10に絞らなければならないのか、ということについて合理的な説明がない。
- 第二のトリックについては、最多本塁打、生涯通算安打、生涯通算打点のTop10としてあげられた選手の名前を見ていただきたい。この中で、田淵氏と川上氏がA型、他はすべてOかB型であるという。
- 最多本塁打
王、野村、門田、山本、落合、張本、衣笠、大杉、田淵、土井
- 生涯通算安打
張本、野村、王、門田、衣笠、福本、長嶋、土井、川上、山本
- 生涯通算打点
王、野村、門田、張本、長嶋、大杉、落合、山本、衣笠、土井
本塁打、安打、打点のどれをとっても偏りがあるのだから、これこそ、血液型人間学が正しいことの証明だ、と言われると納得してしまいそうだが、じつは、三部門は、ほとんど同じ選手がリストアップされている。つまり独立した“サンプル”には、なっていない。もちろん、内野ゴロをヒットにしてしまう俊足の福本選手や、いま人気のイチロー選手のように、本塁打がそれほど多くない人もいるだろう。また、タブチくんのように、本塁打は多いが打率はよくないという人も、いるかもしれない。しかし、総じて、本塁打が多ければ、安打も多い(本塁打も安打だ)。また、本塁打を打てば必ず1点以上の打点が記録されるから打点も多くなるのが当たり前だ。
- 第三のトリックは、第5回で指摘した問題点である。つまり、さまざまな“サンプル”を、個別的に手当たり次第に統計的検定を施し、有意差が認められた都合のよいデータだけを掲げていくというやり方だ。今回、プロ野球の歴代の優秀打者には、確かにO型とB型が多いという結果がある。しかし、投手ではなぜ差がないのか? アメリカ大リーグではどうか? 実業団や大学、高校の野球ではどうなのか? プロ野球の打者の「偏り」を説明できる理論は、ここにあげた様々な集団における偏りを説明し、また予測できるものでなくてはならない。
- 第四のトリックは、基準の曖昧さにある。優秀な打者といっても、いろいろな基準がある。Top10、20、50、100というようにデータを集めて、そのうちいちばん差がでやすい人数のところまでのデータを採用している可能性がある。つまり、Top10やTop50、100で差が出ないがTop20だけ有意差が見られた場合には、Top20だけを紹介するというトリックだ。マラソン選手でも同様。オリンピックの歴代金メダリスト、国際大会の優勝者、国内大会の上位入賞者、などいろいろなデータを集めた上で、有意な偏りがあった“サンプル”だけを強調する。金メダリストで差が出ないときは、国際大会優秀者に、それも差がないときは、国内大会...”というように、いろいろな“サンプル”に検定を施せば、1つぐらい有意な差が認められるものがあったとしても不思議ではない。
きょうはここまでとさせていただく。血液型性格判断が当たっていると思われる理由は、他にもまだ3つ以上ある。次回以降、すこしずつ意見を述べていくことにしたい。