じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 _60219(日)[心理]冬ソナを振り返る(3)【第1話】2人の恋愛はいつから始まったか(1) 昨日の日記にも書いたように、「冬ソナ」が「初恋を成就させる物語」であるとするならば、まず、第1話と第2話で、ユジンとチュンサンがどのようにして相手を恋するようになったのか、そのプロセスを検証することが大切となる。 このドラマでは毎回、オープニングでナミソムで雪遊びをするシーンが流れされるため、ユジンとチュンサンは恋人どうしであるのが当たり前であるかのように刷り込まれてしまう。しかし、実際は最初から仲が良かったわけではない。また、決して運命の糸で結ばれていたわけではなく(※)、いくつかの出来事を経てごく自然に恋愛関係に発展していったと考えるべきであると私は思う。 (※このドラマでは、ジグゾーパズルやタロット占いが「運命の糸」のメタファーとして使われているが、『もうひとつの冬のソナタ チュンサンとユジンのそれから』(ISBN:484701569X)95頁に記されている通り、ユン・ソクホ監督自身はタロット占いのような運命的な繋がりは好まず、客観的な状況の積み重ねを重視していたらしい。) では、実際はいつから恋愛関係が始まったのだろうか。関連書や関連サイトを読めば答えはすぐに分かるかもしれないが、DVDを観ながら自力で謎解きをすることのほうが遙かに楽しい。 ということもあるので、第一話のDVDをお持ちの方は、以下を読まれる前に、御自分で謎解きをされることをオススメします。 楽天日記にも書いたように、そのヒントの1つは、「チョン・ユジン」ではなく「ユジン」、「カン・ジュンサン」ではなく「チュンサン」と、いつから相手を名前だけで呼ぶようになったか、から示唆されている。 もっともその謎解きをするためには、NHKの日本語吹き替え版は全く役に立たない。例えば、2人が塀を乗り越えて校内に入るシーンのところで、吹き替え版では「待ってよ、チュンサン」などと親しげに語りかけている。田中美里さんの声はステキだとは思うが、ここでは2人はまだそんなに親しい間柄ではない。校門の前に立ちはだかる「ゴリラ」先生に叱られるのを避けるために「助け合いの精神」で協力し合ったにすぎないと解釈するべきであろう。実際、韓国盤で音声や英語字幕をチェックすると、「カン・ジュンサン」、「チョン・ユジン」と呼び合っていることが確認できる。 ちなみに、塀を乗り越えるところでチュンサンがユジンに靴を履かせるシーンは、10年後スキー場でユジンがイ・ミニョン「どこの高校を出たのですか」と尋ねるシーン、さらに、空港でユジンがイ・ミニョンを探し当てるシーンの2箇所で象徴的に使われている。靴を履かせた直後の意味づけと、恋愛関係が成立した後のretrospectiveな意味づけが根本的に異なることを示す良い例と言えるだろう。[※] 次に、教室で座っているチュンサンにピアノを教えようとしてユジンが誘いかけるシーンがあるが、その時もまだユジンは「カン・ジュンサン」と呼びかけている(日本語吹き替えでは「ねえチュンサン、ちょっと一緒に来て」となっているが)。チュンサンのピアノの演奏の素晴らしさにユジンが惚れ込んでしまうのは周知の通りであり、この時点からユジンからチュンサンへの恋が始まったといってよいだろう。 これに対して、チュンサンは、この時点ではユジンにそれほど惹かれてはいない。チュンサンはピアノを弾き終えてから、窓の外でサンヒョクがユジンを探している姿を見て、ユジンをナミソムに誘い出すが、その時はまだ「チョン・ユジン」と呼んでいる(日本語吹き替え版では「なあユジン、今から借りを返せ」)(※※)。誘い出す時点でチュンサンはユジンに多少の好意を持ちつつも、サンヒョクを困らせる目的でユジンを利用しようという気持ちを持っていたのかもしれない。 ちなみに、私がDVDでチェックした限りでは、
ナミソムで2人の関係が変化したことは、それ以前の2つのシーンとの対比で明確になるのだが、NHK吹き替え版ではそのうち1シーンはカットされており、もう1シーンはセリフが曖昧で伏線にはなっていないように思う。次回はこのことにふれたいと思う。 [※2/25追記 第12話で、チュンサンは、チュンチョンで過ごした家に残された箱の中から、高校時代・授業中にユジンがチュンサンに宛てたメモを見つける。そのメモはどうやら壁を乗り越えた日に渡されたことになっている。このことについてのツッコミは12話の感想のところに記す予定。 [※※2/25追記 『冬のソナタ上』(キム・ウニ&ユン・ウンギョン著 宮本尚寛訳)ISBN:4140054239) の113頁では、この部分は ●「ユジン、お前、どうしても借りを返したいなら、ほかのことをしてくれないか?」 |