大徳寺高桐院
(1979年秋)
- 京都には長いこと住んでいたので(学部4年、大学院5年、オーバードクター6年!)、そのことを知っている方から観光に行くならどこがよいですか?とたまに尋ねられます。私がよくおすすめするのは円通寺と正伝寺ですが、11月末の紅葉の時期に限ってはこの大徳寺高桐院がイチ押しです。
- 大徳寺は大仙院や私の好みの瑞峰院など美しい石庭があることで知られています。しかしこの高桐院は青竹を背景に、普通の土に楓が植えてあるだけの野趣に富む構図になっています。それだけに四季折々の変化にはきわめて敏感です。
- 毎年11月中旬になると楓が少しずつ色づき始めますが、本当に美しいのはむしろ大半の紅葉が散って庭をじゅうたんのように敷き詰めたときの景色です。その色合いがまた微妙で、年によっては赤茶けてしまってがっかりすることもあります。また、同じ日でも光線や天候の具合によって刻々と変化していきます。
- 数年間のあいだ、大徳寺の近くで家庭教師のアルバイトをしていたことがあります。11月頃になると、境内を通るたびに高桐院の入り口をちょっと覗いて紅葉の具合を確かめます。そして、これはと思う時に拝観料を払って中に入ります。しかし、それだけ念入りに調べても、最高の美しさに出会うことは滅多にありません。ここにご紹介した写真は1979年に撮影したものですが、その後毎年訪れても、これ以上の景色に出会うことはありませんでした(禅宗の修行を積めば、どんな季節でも最高の美しさを見いだすことができるのでしょうけれど...)。
- JRの観光ポスターで高桐院の紅葉の美しさが紹介されたせいか、11月下旬に訪れる人はずいぶん多いように思います。しかし、最高の美しさに出会えるチャンスは滅多にありません。このページをご覧になって実際に訪れてがっかりされた方は、決してあきらめず、時期や時間帯をちょっと変えて何度も挑戦していただきたいと思います。