京都心理学セミナー報告


第22回セミナー:「絶望と無力感からの解放の試み」
“Learned Helplessness”再考

日時:1996年11月16日(土)13:30・17:00
場所:京都大学文学部新講義棟2階大講義室
企画・司会:金光義弘氏(川崎医療福祉大学)

Seligmanの実験と理論/津田彰氏(久留米大学)
Learned Helplessness概念の展開/鎌原雅彦氏(帝京大学)
認知療法の現状と展望/井上和臣氏(鳴門教育大学)


久しぶりに京都に行って来ました。まず驚いたのは、文学部構内の変わり様です。会場となった建物は、私が学生の頃には文学部旧館の中庭であった所に建てられたもので、内部は最新のハイテク設備を備えた会場、いっぽう出口には昔なつかしい中庭の景色が残っていて、何とも奇妙なコントラストを醸し出していました。大げさに言えば、文学部構内にUFOが着陸して建物の一部を破壊し異次元空間を作りだしたような印象です。京大構内に限らず、京都市内の変貌には驚かされます。工事中の京都駅はもとより、烏丸車庫(現在の地下鉄北大路駅)周辺、出町柳駅周辺など、この10年余りの変化は、20年前から10年前までの変化とは比べものにならないぐらいdrasticなものであるように感じています。


津田さんはLearned Helplessness(以下、LH)の研究の歴史と、それが注目を浴びた理由、そして最新の状況についてわかりやすく解説してくださいました。最近ではLHに関する動物実験はあまり行われなくなってきていると伺いました。(私自身もあとで発言したのですが)、この原因の1つは、動物実験に関する倫理規定が厳格になり、少なくとも“研究のための研究”、“論文のための実験”という形の動物実験は行うことができない時代になったためかもしれません。もちろん、このこと自体は望ましいことだと思います。
司会の金光さんのほうから、“学生が勉強しなくても何でも“優”の単位を与えてやると無気力になってしまう”という経験談が紹介されました。正の強化子を行動と独立に与える操作がもたらす“無気力”助長効果と不可避電撃がもたらす効果は似ている面もありますが、私自身は、まずは区別して考えたほうがよいのではないかと思っています。さらに言えば、生命を脅かすほどの強い不可避電撃を用いて行われた研究の成果が、教育場面で見られるような無気力現象にアナロジカルに結びつけられることに対しては警告していく必要があるのではないかと思います。


鎌原さんは、LH概念が、帰属理論、Self-Efficacy、目標理論へと展開されていった流れについてわかりやすく解説してくださいました。