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岡山大学総合情報センター講演会

インターネット時代の新しい教育


2001年11月22日(土)
岡山大学総合情報センター・2階会議室


WebCT自体の情報については などをご覧下さい。

【思ったこと】
_11215(土)[教育]「インターネット時代の新しい教育」(前編)

 12/14の午後に、岡山大学・総合情報処理センターで表記の講演会が開催された。講師は、名古屋大学情報メディア教育センターの梶田将司氏。講演では、WebCT(Web Course Tools)の概略と、梶田先生ご自身の実践例が紹介された。

 WebCTは、ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)で開発され、現在80カ国以上、国内でも日本語版完成により、立命館大学や名古屋大学などいくつかの大学で導入され、ボトムアップ(教員側からのニーズ)とトップダウン(大学審答申によりインターネット授業の単位拡大)の二方向からの要求に支えられて急速に広まっているという。

 そもそもWebCTとは何かということなのだが、私が理解した範囲で自分なりの言葉でまとめてみるならば、
  • 教材提示、自学自習、小テスト、成績管理、教員と受講生との双方向の対話(質問、アンケート)などの機能を統合した、パッケージ型のツールである。
  • 普通のブラウザがあれば、学生は教室でも自宅でも自由にアクセスし、学習を進めることができる。
  • 遠隔教育よりもon campusの利用が多い。
  • 教員は、手持ちのHTML、PDF、PPTファイルなどから、簡単に教材テキストを作ることもできる。テキスト中の専門用語は別立ての用語集に自動的にリンク可能。
  • いくつかのタイプのクイズ(小テスト問題)を簡単に作ることができる。
  • 各受講生がどこまで習得しているか、何回アクセスしているかを把握できる。
  • 何人かの教員で同じ教材を共用することができる。
といった特徴をもつもののようだ。

 このツールは、「知識提供型の教育」から「学生の理解を中心とした教育」へを目ざしたもので、ベンチャーのサポートを受けているものの、あくまで基本は大学に根をおろしている。あわせて、従来の対面型講義(同期型)を、インターネットを利用した非同期型の授業に変える力を持っている。

 以上が、私が理解した内容であった。ご講演後の質疑の時間にも発言させていただいたのだが、全体として、
  • すべての授業をカバーすることはできないが、カリキュラムや到達基準に共通性をもつトレーニング型の授業では大いに効果を発揮するのではないか。
  • 北米ではなく日本ならでは、という対象授業として、外国語教育がある。この方式のコンテンツを整備して、外部試験を利用した効果測定を行えば、かなりのインパクトがあるのではないか。
  • その他、国家試験合格をめざす授業にも向いていると思う。
  • 「私しかやらない」というようなユニークな講義では代替が不可能。
といった感想をもった。

 このほか、「学生の理解を中心とした教育」というモットーを、個別学習を主体として実現するのか、あくまで一斉授業を主体とし、WebCTを補助手段として用いたほうがよいのか、といった問題も重要になってくると思う。このあたりは、8月の日本行動分析学会第19回年次大会シンポジウムでも議論された点である。関連サイトとして などがあるのでご参照いただきたい。
後編では、私自身がこれを利用した場合、それぞれの授業でどういうメリット、デメリットがあるのかを考えてみることにしたい。
【思ったこと】
_11216(日)[教育]「インターネット時代の新しい教育」(後編)

 昨日の日記の続き。今回は、私自身がWebCTを利用した場合、それぞれの授業でどういうメリット、デメリットがあるのかを考えてみることにしたい。ここでは、性質の異なる3つのタイプとして、
  1. 100人〜200人規模の教養教育科目の講義
  2. 15人規模の講読
  3. 15人規模のゼミ授業(院生〜学部生縦割りの演習)
について考えてみることにしたい。

 まず、大人数の講義だが、いま私が開講しているこころの科学Cの場合、ネットの利用は
  • 授業中に使用したパワーポイント・ファイルの公開
  • 受講生専用掲示板での質問受付(←現実には活用されていない)
  • 期末試験の解答と成績分布の公開
といったところだろうか。この程度であれば、WebCTを利用しても、FTPを使って自分で 更新してもあまり手間は変わらないように思う。ちなみに、梶田先生のお話では、WebCTがあれば、受講生のアクセス状況や自学自習状況も把握できるということだったが、100人規模の授業ともなると、欠席の多い受講生にメイルを送ることは難しい。学生の自己責任のもとに確実に履修し、それを怠った場合には不合格とすればそれでよいのではないかと思う。


 次の15人規模の講読であるが、私がいま開講している講読の授業では、英文教材はすべて非公開サイトにアップされ、受講生は各自でそこにアクセスし、ファイルに保存もしくは紙に印刷し、翌週までに訳文や要約などの課題を提出することになっている。教材を非公開としたのは言うまでもなく著作権が絡むためであるが、WebCTを使えば公開の範囲をいろいろなレベルに設定できるというのでこれは便利かと思う。

 最後の15人規模のゼミ授業の場合だが、ネットの利用は
  • 毎週の課題(卒論研究等の進捗状況報告、各種講演会・学会等の参加報告、または文献リビュー)提出。ネット上での公開。
  • 受講生専用掲示板(非公開)での相互リビュー
  • Eメイルを通じた連絡、個別相談
  • ゼミ構成員のポートフォリオ公開
  • 卒論等のデータベース公開
など多岐にわたっている。このうち、提出されたファイルをアップするのは結構時間をとられる。掲示板形式のような形で学生が自力でアップできればずいぶんと手間が省ける。

 それと、卒論研究の進捗状況のようなコンテンツや相互リビューの掲示板は不特定多数には公開できないので、現在のところは私が私費でレンタルしているサーバーの一部をそれにあてている。このあたりの問題点はWebCTがあればすべて解消するだろう。



 以上、すべての授業とは言えないが、少人数のゼミ型の授業においてWebCTはかなり活用ができるのではないかと期待される。

 最後に、講演終了後、「こういう授業をやるには、パソコンがいっぱい置かれた部屋がもっと必要になりますね」とある先生が発言されたところ、

●いや、これからは、ディスクトップは要りません。各教室に無線LANを整備し、ノートパソコンは学生が持参すればよい。

というようなお答えをいただいた(あくまで長谷川の記憶に基づくので文言は不確か)。なるほど、これならば、ノートパソコン上でのトラブルは学生の自己責任ということになる。そうか。かつて大型計算機の端末ばかりが置かれた計算室が、パソコンの普及により、スタンドアローンでも利用できるパソコン室に様変わりし、そして21世紀にはとうとう、情報コンセントとテーブルと椅子だけの殺風景な部屋に進化するのか。そこまでは思いつかなかった。

 しかし、そうなると、ノートパソコンの盗難も増えてくるのではないかと危惧される。収納用の個別のロッカーを完備するとともに、いっそのこと、各ノートに盗難防止用の発信器でもつけて、持ち主から100m以上離れたらアラームが鳴るような設定にしておいたらどんなもんだろうか(←持ち主が必ず持ち歩くケータイと一体化した盗難防止装置などもよいかも)。

12/20追記]
 上記の「情報コンセントとテーブルと椅子だけの殺風景な部屋に進化するのか。」について、梶田先生から「「端末室は進化するのではなく消失する」「おそらく,講義室がブラウジングの場所になるのでしょう」とのコメントをいただきました。謹んで追記させていただきます。