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2月8日(日)

【思ったこと】

980208(日)
[心理]「我慢」について思ったこと(その2)
 きのうに引き続いて「我慢」の話題。ただし、今日は「我慢」に限らず、我々が日常生活で過大に評価しがちな一般能力や一般的性質について考えてみたいと思う。昨日の日記で、
ある分野で我慢強くなったからと言って、別の分野でも我慢強くなるとは限らない。
という視点を示したが、じつは「我慢強さ」に限らず、我々は日常生活のなかで、「根性」、「精神力」、「忍耐力」、「心の豊かさ」、「感性」、「人間性」、「創造性」、「知能」、「思考力」というように、きわめて広範囲にわたって、あたかも一般能力や一般的性質が存在することが当たり前であるかのように決めてかかっているところがある。しかし、実際に細かく分析してみると、そうした「一般性」は、全くの錯覚であったり、予想外のごくごく弱い「共通性」にすぎなかったり、あるいは営利目的に利用されているだけであったりする場合が結構多いようだ。
 一例をあげれば「知能」がある。すでに多くの心理学者によって解き明かされているように、単一の「知能」なるものはこの世界には存在しない。何種類か何十種類の共通因子や特殊因子が絡み合いながら特定の作業遂行能力に一定の影響を及ぼしているというのが真実であって、いわゆるIQというのは、単一の知的能力の指標ではなく、雑多な能力についての個々の素点を寄せ集めて、その総合点を平均が100、標準偏差を15ないし20になるように変換した、相対比較のための総合指標のようなものにすぎないのである。しかし、これが独り歩きして、IQをアップするための早期教育のようなものが開発され、これで金儲けをする人たちが現れてくるのである。

 もとに戻って「我慢強さ」について考えてみたときにも、果たして、一般的性質として「我慢強さ」なるものが存在するのか、仮に存在するとしても、個々の試練や逆境の中でどこまでそれを発揮するのか、もう少し詳細に検討を進めていく必要があるものと思う。
 ここで「我慢強さ」を「苦しいことやつらいことをこらえること。たえしのぶこと。」についての一般的性質だと仮定してみよう。もしそういう性質があるとするならば、例えば、歯医者で麻酔もかけずにドリルで削られる痛みにじっと耐える人は、失恋してもじっと耐えるし、寒中水泳もできるし、あるいはひょっとして、バス旅行中に尿意をもよおしてもシッコしたいのをじっと我慢できるということになってしまう。果たしてそこまで一般性・共通性のある「我慢強さ」が存在するのだろうか。

 これに対してもし「我慢強さ」が非常に個別的なものであったとすると、特定の分野で「我慢強さ」を訓練しても別の場面では殆ど役に立たない可能性が出てくる。どうだろうか。寒中水泳の訓練をすれば、失恋しても打ちひしがれることはないと言えるだろうか。

 ここまで読んでいただいた方の中には「いや、そんなことはない。スポーツの部活で鍛え上げられた我慢強さは、いまの営業マン活動に役立っている」と反論される方もあるかもしれない。確かに、ある種の我慢強さは、一定の一般性、共通性をもつように見えるが、その場合ですら、何らかの錯覚が生じている可能性がある。時間がないので明日以降に続く。
【ちょっと思ったこと】
 岡山県吉永町の産業廃棄物最終処分場建設をめぐる住民投票で、建設反対が3773票、得票率97.95%に達したという。投票率が91.65%ということだから、絶対得票率でも89.77%。建設に同意していた地区の一部住民を除き、ほぼ全員が反対票を投じたことになる。
 この種の投票結果については、一部に「地域エゴではないか」という批判があるらしいが、もっと根源的に、産廃問題の扱いをめぐる行政当局への不信感があるものと推察される。じっさい住民へのインタビューでも、「長船町はなぜ自分の町に処分場を作らないのか」という不公平を訴える人よりも、「いのちを守る必要、水を守る必要」を強調する人が多かった。
 朝日新聞2/9記事によれば、今回投票が行われた吉永町は、かつて、陶器の原料となる、ろう石とクレーの鉱山が栄え、その坑内の強酸性の水が河川に流れ込んだり、じん肺に苦しんだりした公害の経験をもつという。しかし、やはり一番の不信感を与えたのが、すぐ南の瀬戸内海に浮かぶ豊島(てしま)の産業廃棄物の不法投棄問題であろう。瀬戸内海には面してはいないものの、吉永町と豊島は直線距離で40kmの近さにある。対岸の火事とは言い切れない切実さが伝わっているのだろう。
 今回いくら行政当局が安全を保証したところで、また豊島の問題で国や香川県に過失があろうとなかろうと、とにかく地球上の1箇所にああいうものを発生させてしまった事実は否定できない。今後の石井岡山県知事の対応姿勢が問われるところだ。
【新しく知ったこと】
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【スクラップブック(翌日朝まで)】
※“..”は原文そのまま。他は長谷川による要約メモ。【 】は長谷川によるコメント。誤記もありうるので、言及される場合は必ず元記事を確認してください。
  • 名護市長選挙、ヘリポート賛成派が擁立した岸本氏が16253票で当選。反対派の玉城氏は15103票。[各種報道]
  • 長野五輪で8日、オランダのロメが5000mスケート競技で従来の記録より6秒04も短い6分28秒31の世界新記録で金メダル。2、3位も世界新。[各種報道]
  • 兵庫県黒田庄町で共産党員の首長誕生。県内では南光町と福崎町に次いで3人目。全国では東京の狛江市などに次いで6人目。