【思ったこと】 980624(水)[一般]小・中学校で学ぶべきこと・教えるべきこと(2)国語(その1)漢字教育 22日に公表された教育課程審議会の「審議のまとめ」について、「日記猿人界」でも多少の反応があった。私が拝見した限りでは、6/23付けの幹事クリタのコーカイ日誌さんの そもそも学校を週5日制にするから教える内容を少なくしよう、という発想がおかしいと思います。教えるべき内容を先に吟味検討し、本当に社会に出るまでに学ばなければならないことだけを必須として、それを完全に理解させるのに必要な体制(週に何日学ぶべきか、ということだけではなく、1クラスの最適な人数や、授業の選択方法など)を考えるべきでしょう。という御意見に代表されるように、全体として「先に週5日制ありき」ではないかという批判的な声が強かったように見受けられた。 私自身も上で指摘された点はもっともだと考えているが、その批判を実りあるものにするためには、個々の科目で何を教えるべきなのか、またどういう教育体制をとることが一番望ましいのかといったことについて建設的な提案をしていくことにつきるかと思う。 というような趣旨で、この連載では、科目別に私なりの考えを述べていくことにしたいと思っている。ただ、念のため言っておくが、この連載で書くことは本来、日記の上の「ひとりごと」にすぎない。それゆえ、根拠に乏しい思いつき程度の発想も含まれているし、他の方の御意見を拝聴したうえで修正することもありうる。いわばたたき台の提示のようなものであるとご承知願いたいと思う。 さて、まずは国語から。国語教育について私が特に訴えたいことは、
1.についての私の主張は、簡単に言えば、「漢字単熟語の読み」に関してはできるだけ早く教え始めるべきであること。反面、書取は極力少な目にし、作文指導の中で各自の好みに応じて自主的に学ばせるようにすべきだということである。言いかえれば、「漢字を読めるようになる」ことは一定の範囲で義務、いっぽう「漢字を書くこと」はあくまで個々人の権利であるというのが基本的なスタンスだ。 ここで少々脱線するが、もし日本語が、ハングルのように漢字無しで成り立つならいっそのこと全部仮名表記かローマ字表記にしてしまえばよい。それができないのはなぜかと言えば、日本語は古来からの「やまとことば」に大量の漢語が移入されたことによって、同音異義語が極端に多い言葉になってしまったためであると言えよう。たとえば「こうどう」を例にあげよう。ATOKで漢字変換してみると、「行動」のほか「講堂」「公道」「坑道」「黄道」など全部で7通りの「こうどう」があることが分かる。しかも日本語は英語などと違って単語のあいだにスペースを入れない。それでもなお単語や文節の切れ目が分かるのは、やはり漢字表記に依るところが大きいように思う。 日本語に漢字が不可欠であるとすると、いつごろからどのぐらいの数の漢字を教えたらよいかという問題が出てくる。ところがこのことについて、例えば学年別の漢字配当数を決めるにあたって具体的なデータが参考にされた形跡は見あたらない。このぐらいなら覚えられるだろうというドンブリ勘定で割り当てているのではないかと疑わざるを得ないところがある。 では、じっさいに子供は何歳ぐらいから、どのぐらいの数の漢字を覚えられるのだろうか。じつは、このことに関しては過去に私自身4本ほど論文を書いたことがあるのだが、単熟語の読みということに限るならば、2歳数ヶ月からでも十分可能である。自閉症児の場合でも、読みに限るならばかなりの速度で数を増やすことができるのだ。もう少しデータを積み重ねる必要はあるけれど、「早期漢字教育イコール英才教育」という固定観念に基づく批判には根拠が乏しい。むしろ平仮名のみの表記で読みづらい絵本を読ませることのほうが問題だ。幼稚園や保育園での遊びの中から、漢字まじりの表記を積極的に導入していくべきであると思う。 いっぽう書き取りはどこまで必要か?。いまやワープロ万能の時代だ。いや手書きが必要な場合でも、電子辞書が横にあればすぐに適切な漢字を見つけることができる。音声認識も可能になってきた。こんな時代に無理に書き方まで覚えさせる必要は全くない。画数の少ない漢字から教えるなどは愚の骨頂だ。正しく読めること、ひらがなから変換された漢字が妥当な変換であるかどうかを弁別する力さえ身につけていれば、それでよい。 余談ながら、この日記「じぶん更新日記」のネイミングのきっかけとなった鷲田清一先生の文章なんて、あんまり漢字が出てこなかったように思う。ひらがなばかりで文章を書きたい人はそれでよいではないか。 |
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