じぶん更新日記1999年5月6日開設Y.Hasegawa |
うっすらと雪をかぶった梅の花。27日朝撮影。 |
【思ったこと】 _00127(木)[心理]「行動随伴性に基づく人間理解」その後(12) :行動とその結果から「生きがい」を読み解く 1月は31日が卒論提出締め切りの日。昨日の日記にも記したように、今年度は17人中8人が私のゼミに所属しており、この日も、栄養ドリンク剤やビタミンのど飴など持ち込んで延々6時間以上にわたって執筆指導を行った。ゼミの構成員はいずれも何かしら行動分析学的手法を取り入れた研究をしているが、このうちの3人は「生きがい」、「働きがい」の問題に取り組んでいる。具体的な対象は、高齢者、農業従事者、産業労働者となっており、うまくデータがまとまれば三部作として、従来とは違った視点からの生きがい論を展開する基礎資料が得られることになるものと期待される。 これらの研究は、基本的には個別のインタビューに基づくものだが、「インフォーマントが自発的に語ったことだけを資料とする」という文化心理学的アプローチとはやや異なり、もっぱら「行動→結果」という行動随伴性をできるかぎり細かく聞き出すことを特徴としている。「行動→結果」を重視する理由は、この日記で何度も引用しているスキナーの “Happiness does not lie in the possession of positive reinforcers; it lies in behaving because positive reinforcers have then followed. 【生きがいとは】好子(正の強化子)を手にしていることではなく、それが結果としてもたらされたがゆえに行動すること”【訳は佐藤方哉先生によるものを基本としている。行動分析学研究、1990, 5, p.96】”を具体的に検証していくことが、生きがいの創出に役立つと考えているためである。 例えば、「私は山登りが生きがいだ」というお年寄りが居たとする。この場合の「山に登ること」は具体的な行動ではあるが、これだけでは結果部分が見えてこない。可能性のある結果としては
このように、同じ「山登りが生きがい」という言葉を発する人でも、どういう行動がどういう結果によって強化されているのかを調べてみると何通りものパターンがあることが分かってくる。それを調べれば、将来その人が足腰を傷めて自力で登頂できなくなった時に何が代わりになりうるかも見えてくる可能性がある。 インタビューという方法は相手方の言語報告だけに頼るものであるから、報告内容に主観や偏見が入りやすく、本人が気づかない事実は決して報告されないという難点がある。とはいえ、今回のように「行動→結果」を詳細に聞き出すという手順を重視する限りにおいては、第三者が連れ添って観察した場合にかなり近い形で事実を把握することができるはずだ。 このほか、ある事象が強化子(好子)になっているかどうかは、実験的に操作してみない限り断定できないだろうという批判もありうる。確かにインタビューだけで限界があることは認めるが、例えば上記の例で、「頂上が霧に覆われていても山に登りますか」と聞けば、その答えがYESかNOかということから、景色が強化因になっているかどうかを推定することは可能。それと、一個人の生活に立ち入って実験的介入を行うことは現実に不可能。だから何もできないと諦めるのではなく、できる方法を実行していく姿勢が大切だと思う。 さて、これらのテーマに取り組んでいる卒論生がいま一番悩んでいるのは、おそらく、個別の事例から一般性のある結論をどう引き出していくのかということであろう。対象者が「楽しい」とか「どちらもできるとすればこっちを優先する」と答えた行動随伴性をタイプ分けすれば、ある程度一般化された結論が出てくるはずなんだが、統計的解析と違って自動的に有意差が出てくるものでもない。ある程度の「名人芸」が要求されてしまうところをどうするかが残された3日間の腕の見せ所と言えよう。 |
【ちょっと思ったこと】
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【スクラップブック】
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【今日の畑仕事】
長ネギ、チンゲンサイ、大根、人参を収穫。 |