じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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3月11日(土)

【思ったこと】
_60311(土)[心理]冬ソナを振り返る(10)【第2話】チュンサンは大晦日に約束を守ろうとしていたのか?

 冬ソナ第2話は、大晦日にユジンと会う約束をしていたチュンサンが、トラックにぶつかって事故「死」するというシーンで終わる。これはユジンにとっては、後の人生を左右する衝撃的な喪失体験であった。

 しかし、3月4日の日記にも書いたように、チュンサンは決して、ユジンとの約束を最優先で守ろうとしていたわけではなかった。チュンサンはあの夜、ユジンに何の連絡もせずにチュンチョンを去ろうとして空港に向かっていたのであった。

 このあたりの経緯について、『冬のソナタ』時系列あらすじというサイトでは、
しかしチュンサンは、ユジンの亡父が母のかつての恋人ヒョンスであったことを知り、自分とユジンが異母兄妹だと誤解してしまう。デートの約束をしていた日に、チュンサンは黙って春川から去ろうとする。思い直してユジンの待つ場所へ急ぐ途中、彼は交通事故に遭った。
というように記されている。うーむ、どうだろうか。確かに、チュンサンはユジンの家で、カン・ミヒ(チュンサンの母)とヒョンス(ユジンの父)が腕を組んだ写真を目撃した。しかし、その直後にキム・ジヌの研究室を訪ねた時の会話内容からみて、いくら高校生という未熟さがあっても、異母兄妹であると誤解するのは性急すぎるように思われる。
【冬のソナタ 上』(ISBN:4140054239、204〜205頁)では、この時の会話内容は次のように記されている。
「教授、本当にユジンのお父さんとカン・ミヒさんはお互いのことが好きだったんですか?」
ジヌは返事の代わりに苦笑いをした。
「ユジンの友達なのにこんな話をしてもいいのかな……。ま、好きだったな、二人は。でも、ヒョンスが結婚すると、ミヒはここを去った……」
白紙のような顔でジヌの前に座っていたジュンサンの手がかすかに震えた。しかし、ジヌがジュンサンの心の中を察することはできなかった。そのすべては、はるか遠い昔のことだったからだ。
「じゃあ、教授は? 教授はカン・ミヒさんとただの友達だったんですか?」
ジュンサンは、なるべく落ち着こうとしながら、その質問をロにした。
「わたしはミヒに片思いしてたんだ。ミヒはヒョンスが好きだった……。でも、すべて昔の話だ」
 チュンサンがここで知り得た情報は、キム・ジヌは自分の父親ではなかったこと(←じつは、...)、カン・ミヒは、ヒョンスが別の女性(=ユジンの母)と結婚した時にチュンチョンを去っていたということだけであった。

 また、少なくとも10年前の時点では、ユジンとチュンサンは結婚をめざして交際していたわけではなかった。仮に異母兄妹かもしれないという可能性が出てきたからと言って、何も告げずにチュンチョンを去ろうとはしないはずだ。むしろ、血のつながりがあるかもしれないという親近感のほうが生まれてくるはずであり、その謎を2人だけで探そうとするのが自然ではないだろうか。お互いの悩みを打ち明けられないというのは、初恋のレベルを超えていないためか。




 ちなみに、このドラマでは、チュンサンの父親探しは「初恋を成就させる」ための阻害要因として働いているにすぎない。じっさい、最終的にキム・ジヌが父親であると分かった時のチュンサンの反応は「父を捜して三千里」というような感動場面とは全く別物で、怒りと苦痛に満ちたたものであった。
「ジュンサン……、お前は、わたしの息子だ」
震える声で、衝撃的な告白をするジヌを見つめていたジュンサンは、何かに頭を殴られた気がした。
「昨日、病院で確かめた。ミヒも認めたんだ。お前はヒョンスの息子ではなく、わたしの息子なんだ」
ジュンサンは、メガネを取ってすすり泣くジヌをただ呆然と見つめることしかできなかった。
詫び入る気持ちで涙を流すジヌは、ジュンサンに強いられた苦痛の深さを知っているのだろうか....。

『冬のソナタ 下』(ISBN:4140054247、237頁)
 であるならば、第2話の段階では、「異母兄妹」であるかもしれないというのは、視聴者に対して伏線を張るレベルにとどめておいたほうがよいのではないか。

 第2話のラストは、例えば、

●大晦日の日、母親のカン・ミヒを空港まで見送りに行ったチュンサンは、チュンチョンに戻る途中で、大雪の大渋滞に巻き込まれる。やっと町に着いた時にはまもなく24時になる寸前であった。待ち合わせ場所に急ぐ途中で...

という形でも十分ではなかったかと思う。