じぶん更新日記1997年5月6日開設Y.Hasegawa |
【思ったこと】
990211(木)[言語]数字と助数詞の読み方(1):三のあとに続く助数詞はなぜ濁音になりやすのだろう? 2/11夜の「マジカル頭脳パワー」で、「十階建てのマンションがあります。あなたが住んでいるのはナンガイ?」というクイズがあった。正解は三階。「〜階」を「〜ガイ」と濁って発音するのは「三」しか無いからである。これを見てふと思ったのだが、「三」のあとに続く助数詞は濁って発音されることが多いようだ。たとえば、「三本」、「三匹」、「三羽」、「三杯」、「三尺」、「三軒」、「三票」、「三俵」、「三国」、「三千」など...。 以上の事例から、上記の「何階?」のクイズは、「何本?」、「何匹?」などに置き換えても同様に「三」が正解となることが分かる。もっとも、厳密に考えれば「何〜」という質問が最初から「三〜」を想定することはあり得ないが...。「三」以外の数についてみると、助数詞が「はひふへほ」で始まる場合には、「一」、「六」、「八」、「十」、「百」では「イッポン」、「ロッパイ」というように半濁音「ぱぴぷぺぽ」に転じることが多いようだ。もっとも「三」のあとにも「三分(サンプン)」、「三編」、「三敗」のように半濁音が続くこともある。 最初のクイズに戻るが、「何本?」、「何匹?」、「何杯?」、あるいは「何分?」、「何敗?」というように、「何」に続く助数詞は「三」と同様の濁り方をするように思える。「サン」、「ナン」というように「撥音」のあることが関係しているのだろうか。少なくとも「〜ンカ〜」や「〜ンハ〜」よりは「〜ンガ〜」、「〜ンバ〜」のほうが滑らかに発音できるような気はする。但し「四(ヨン)」のあとでは、濁らないほうが多いようにも思う。四本を「ヨンボン」と発音する人は居ないだろう。「四敗」を「ヨンパイ」と発音するように、「四」のあとに半濁音は続きやすいようだが....。 いっぽう「二」、「五」、「七」、「九」のあとでは、濁音にも半濁音にもならず、「二本」、「五杯」、「七匹」のように「はひふへほ」で発音されることが多いように見える。もちろん、「二題」、「五台」、「七号」のように、助数詞となる漢字がもともと濁音の読みしか存在しない場合は別であるが...。 以上、何か体系的な法則があるのだろうか。外国人留学生はどうやって勉強しているのだろうか。情報をいただければ幸いです。 |
【思ったこと】
990214(日)[言語]数字と助数詞の読み方(2):4本、4人、四条、四国、4ドル...の読み方 2/11の日記で、マジカル頭脳パワーの番組をきっかけに、「三」のあとにくる助数詞が「三階」、「三杯」、「三千円」のように濁音になりやすいことにふれた。そのさい、「四」のあとの助数詞は必ずしも濁らないように思うと書いたところ岡島昭浩さんから、地方によっては「ヨンボン」と濁るところがあるという情報をいただいた。この情報は、岡島さんの96年9月20日の日記に記されており、三のあとがなぜ濁るかについても考察されている。 そのページにもあるように、「シ」ではなく「ヨ(ン)」という訓読みが使われるのは「しの字嫌い」の影響らしい。確かに、「四人」を「シニン」、「四年」を「シネン」とは読めないよなあ。 もっとも、何でもかんでも「シ」を避けるというわけでもなさそうだ。京都の東西の通りは「シジョウ(四条)通り」、京阪京津線には「(シノミヤ)四宮という地名もあった。 もっとも、京都の通り名は、四条以外も「シチジョウ(七条)」、「クジョウ(九条)」というように簡潔な音読みで共通しているようにも思える。それから同じ「四条」でも「旭川四条」は「アサヒカワヨジョウ」と読む。北海道を旅行した時に、あれ?と思ったことがあった。他にも「四国」、「四月」を初めてとして、「四季」、「四天王」、「四十肩」、「四十七士」、「四十九日」...というように「シ」を使うことも多いようだ。一日はニジュウヨ(24)時間なのに「ニジュウシ(二十四)の瞳」と読むのは何故かなあ。 これも余談になるが、「四月」のアクセントは東京弁では「シガツ」(赤字がアクセントの高い部分)であるはずだが、北九州出身の妻は「シガツ」と発音する。「四国」については東京弁は「シコク」だと思ったが、私自身は東京育ちであるにもかかわらず「シコク」と発音する。四国から来た人との接触が多く、ネイティブな発音にいつの間にか合わせたせいだろうか。 「ヨ」、「ヨン」、「シ」の使い分けについては、岡島さんのページやそこに紹介されている文献に説明があるものと思われるが、私のほうではまだ拝見できていない。 三省堂の『新明解』第五版によると、外来語を修飾する時は常に「ヨン」を用いるという。確かに、「4ページ」、「4ポイント」、「4クラス」、「4ドル」、「4エックス」、「(鉛筆の)4B」、「第4レーン」、「4メガバイト」、「4cm」、「4mg」というように、「ヨン」だけを使いますなあ。ただその理由は分からない。誰かが決めたのだろうか。外来語が続く場合のこのルールは「ナナ(7)」についても当てはまるように思うが、「シチミリ(7mm)」、「シチドル(7ドル)」という言い方はそれほど不自然には聞こえない。 上の「ヨン」と「シチ」の違いから想像するに、「シ」が1拍であるために聞き取りにくく、電話やラジオでの正確な数値の伝達に支障があったことも「シ」を「ヨン」と読む原因になっている可能性があるように思う。じっさい、ラジオの株式ニュースでは「二」をわざわざ「フタ」と発音していたように思うが、これも正確な伝達のためではないだろうか。もっとも気象通報で「風力2」は「フウリョク ニ」であったようにも思う。こんどちゃんと聞いてみなければ...。 最後になるが、上にリンクさせていただいた岡島さんのページには、大学名の略称(たとえば「福井大」、「福岡大」、「福島大」、「島根大」...)とか、女性名のアクセント(たとえば「はるな」と「はるえ」の違い)、京都の通り名が交差した場合の優先順位(たとえば「西大路」と「四条」のどちらが上に来るか)など、この1ページ分だけを拝見してもたいへん興味深い話題が多い。ことば会議室や目についたことばを通じて大いに勉強させていただこうと思っている。 |
【思ったこと】
990215(月)[言語]数字と助数詞の読み方(3):「シチ」と「ナナ」 2/14の日記の続き。この話題はもともと「三」のあとに続く助数詞が濁音になるというところから出発したものであったが、「四(シ、ヨ、ヨン、ヨッ)」のように数字の読み方自体にも面白い違いがあることに気づいた。 お互いを更新する掲示板では、櫻さんから、「123456789」と順番に読む時と、ロケット打ち上げの秒読みで「987654321」と逆に読む場合で、「4」と「7」の発音が異なるというご指摘をいただいた。確かに、順に読む時は「4(シ)」、「7(シチ)」と発音するが、秒読みでは「7(ナナ)」、「4(ヨン)」となるのが一般的であろうと思う。もっとも北九州在住の義父は「54321」を「ゴ、シ、サン、ニ、イチ」と発音していたが...。 「シチ」と「ナナ」の使い分けでもうひとつ思ったのは「7月7日7時7分7秒」の読み方だ。特に「7時7分」を「ナナジ シチフン」とせずに「シチジ ナナフン」と発音する点は、子供や留学生にどう説明したらよいのだろう。同じ時刻でも「17時」のほうは「ジュウシチ時」、「ジュウナナ時」どちらの発音も自然に聞こえる。 日時に関しては「ク」と「キュウ」でも似たような現象が起きる。「9月9日9時9分9秒」など。 |
【思ったこと】
990216(火)[言語]数字と助数詞の読み方(4):「ナナ」と「ココ」 昨日の日記でとりあげた「123456789」と「987654321」の読み方の違いに関して、岡島さんから上越教育大学の高本さんのページを紹介していただいた。“ことばに関する「大法則」の一つ”になっているとは知らなかったなあ。 私のほうの日記だが、この話題に関しては全く素人で文献など何も調べずに好き勝手なことを書いてきた。にもかかわらず、ネットの威力というか、次々と情報が寄せられ「じぶんが更新」されるのはまことにありがたいことだと思う。で、せっかくこの連載で「三」、「四」、「七」の読み方にこだわったついでに、「七」、「九」について、もう少しふれてみたいと思う。 さて今回の話題は、1〜9までの数を「やまとことば」で発音した時に、「七」と「九」だけは「ナナ」、「ココ」というように同じ音を繰り返すのは何故だろうという疑問。 ここで私が25年以上前に大学の一般教養で受講した「言学」の授業で、日本語の数の読み方が二進法と微妙に関連しているということを思い出した。つまり
そこでここから先を勝手に想像してみるに、7と9は1、2、3、5の倍数で作れない特殊な数なので読み方も特殊となり同じ音が繰り返されるという考えが生まれる。....とここまで書いてみたが、あんまり大した説とも言えませんなあ。がはははh。たぶん、この話題もずっと昔に専門家によって解決されているものと思う。 |
<追記>
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