じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 東の空に昇る月齢13.0の月(写真上。1月14日夕刻撮影)と西の空に沈む月齢13.4の月(写真下。1月15日早朝撮影)。写真下には木星も写っている。


2014年1月15日(水)

【思ったこと】
14015(水)100分 de 幸福論(9)フロイト(2)

 昨日の続き。

●心理学部門:鈴木晶氏『精神分析入門』フロイト

ではまず、「人間は他の動物と違って本能が壊れている。」として、
  • 動物は遺伝子情報に書き込まれた本能によって行動様式が決まっている。
  • 人間は本能は行動に結びつかず、欲動につながっている
という、人間と、人間以外の動物との違い、さらに、二大本能として性欲と食欲があることが論じられた。

 もっとも、長年、学習心理学や行動分析学に携わってきた立場から言えば、上掲の指摘は、科学的に見て誤っているように思う。特に「動物は遺伝子情報に書き込まれた本能によって行動様式が決まっている」という部分であるが、そのような形で行動様式が決まっているのは、レスポンデント行動の中の無条件反射に限られているのであって、それ以外の行動、すなわち条件反射一般(レスポンデント行動)や、オペラント行動一般の行動様式は、人間であれ動物であれ、遺伝子情報に書き込まれた本能によって決まるものでは決してない。

 例えば、青いランプがついた時には左のボタン、赤いランプの時に右のボタンを押すというような「行動様式」は、人間でもハトでも学習することができるが、それらは別段、「青なら左、赤なら右」という行動様式が遺伝子情報に組み込まれているからではなくて、強化によって弁別されているからに他ならない。その証拠に、行動随伴性を変更すれば、「青なら右、赤なら左」という正反対の行動様式を身につけさせることだって容易にできる。よって、「動物は遺伝子情報に書き込まれた本能によって行動様式が決まっている」というのは思弁的で一面的な見方に過ぎない。正しくは、
人間や人間以外の動物の行動様式は、無条件反射の場合は遺伝子情報に書き込まれた本能によって決まる。しかし、条件反射の場合は刺激の対提示によって、またオペラント行動の場合の行動様式は、行動随伴性を基本とするオペラント条件づけによって決まる。
と言い直す必要がある。

 もっとも、私の乏しい知識から言えば、フロイト自身は学習経験を重視しており、スキナーもフロイトの業績をかなりの程度で評価しているように思う。ちなみに、こちらのサイトScience and Human Behavior (free download).というところから無料で閲覧可能な『科学と人間行動』では、簡易検索をしただけでもざっと48箇所でフロイトに言及している。

次回に続く。