じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
岡大西門・西側花壇のホリホック(タチアオイ)。ここには赤やピンクの花もあるが、一昨年秋に発芽した黒花がいちばん先に咲いた。高さは2メートル以上。 |
【思ったこと】 140601(日)長谷川版「行動分析学入門」第7回(19)好子出現の随伴性による強化(26)部分強化と強化スケジュール(13)いろいろな強化スケジュール(6)並立スケジュールと並立連鎖スケジュール 並立スケジュール(Concurrent schedules)とは、同じ時間帯、同じ空間に、複数の強化スケジュールが同時に設定されているような状況を言います。それらのスケジュールは独立しており、また、2種類の行動を同時に行うことはできません。スケジュールが複数あるため、英語表記では「Concurrent schedule」ではなく「Concurrent schedules」というように複数形になっている点にご注意ください。 並立スケジュールは、分かりやすく言えば、特定の強化スケジュールが設定されているスキナーboxを2個連結して、どちらの箱にも自由に移動できるようにした状況ということになります。例えば、ハトを被験体とした場合、ハトはスキナーボックスAではVR30という変比率強化スケジュールで強化され、スキナーボックスBではVI 3minの変時隔スケジュールで強化されるというような状況です。ハトは、スキナーボックスAとBの間を自由に行き来することができます。このような状況のもとで、どちらのスキナーボックスのほうが滞在時間が長いか、あるいはどちらのほうでたくさん行動するか、などを調べることができます。 もっとも実際の実験装置では、2つの箱ではなく、1つの箱の中に2つのキーが用意されています。左のキーはVR30、右のキーはVI 3minで強化されるというような装置です。このほか、2つのキーのうち左側は「スケジュール切り替えキー」、右側は「反応キー」というように機能を設定し左側の切り替えキーを押すたびに、右側のキーの色が赤または青に替わり、それぞれの色のもとでVR30、VI 3minいずれかの強化スケジュールが行動を強化するという設定のしかたもあります。 なんだか複雑なスケジュールのように見えますが、日常生活場面では
並立スケジュールをより一般化した考え方として「並立随伴性(Concurrent Contingencies)」があります。私たちは常に、複数の独立した行動随伴性に晒されており、その中でいろいろな行動を増やしたり減らしたりしています。ここでは詳しく述べませんが、日常生活場面においても、単一の行動の増減ばかりに注目するのではなく、同時に存在している複数の随伴性、あるいは、複数の行動のあいだの両立可能性について分析する必要があります。 なお、実験的行動分析では、上述の並立スケジュール(Concurrent schedules)をさらに複雑にした、並立連鎖スケジュール(Concurrent-chain schedules)がしばしば用いられています。上記の2つの連結したスキナーボックスの例では、ハトはスキナーボックスAとBの間を自由に行き来することができると言いました。並立連鎖スケジュールの場合は、まずスタートボックスのような箱にハトを入れておき、左側のドアをくぐればボックスA、右側のドアをくぐればボックスBに到達できるようにします(後戻りはできません)。いずれかのボックスでめでたく餌がもらえたら、ハトは再びスタートボックスに戻されます。このように、どちらのボックス(スケジュール)を選択するのかということと、選択したスケジュールのもとで実際にキーを押して餌をもらう段階を分離することで、どちらの強化スケジュールが好まれるのかといった問題をより精密に解明することができます。なお、実際の実験装置では、スタートボックスやドアの代わりに、2個のキーが並んだ1つのスキナーボックスの中で、キーの照明や色を操作して、初期段階(initial link)と終期段階(terminal link)の二段階からなる強化が行われます。こうすることで、ハトをいちいちスタートボックスに戻すといった手作業は不要となり、同じ時間に何羽ものハトを使ってデータを集めることができます。 次回に続く。 |