じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
6月16日付けの楽天版にも掲載したように、大学構内各所でネジバナの花が見頃となっている。この写真は、一般教育棟C棟とD棟の間の芝生あり、以前から同じ場所に1株だけ生えており、多年草化しているものと推測される。 |
【思ったこと】 140617(火)長谷川版「行動分析学入門」第10回(1)嫌子出現の随伴性による弱化(1)「好子出現」との非対称性 「好子出現の随伴性による強化」は前回でひとまず終了し、今回から、「嫌子出現の随伴性による弱化」の話題に入ります。「嫌子」と「弱化」については、第2章の2.4および2.5のところで簡単に紹介しました。「好子出現の随伴性による強化」と「嫌子出現の随伴性による弱化」は、好子が嫌子に、強化が弱化に置き換わっています。一口で比較すれば、まず「強化」と「弱化」は、
よって、「嫌子出現の随伴性による弱化」とは、オペラント行動が自発された直後に嫌子が出現することによって、当該の行動が減少、もしくは低頻度に抑えられることを言います。この随伴性は、基本的には、「危険から身を守る」という随伴性です。第3章の冒頭で、「幸福(生きがい)の本質はここにあり」と題して「好子出現の随伴性」の意義を強調しましたが、残念ながら世の中は危険に満ちています。嫌子が出現するような行動とは、危険な事態を招くような行動であり、再び過ちを犯さないようにすることが適応的と言えます。 第3章の「好子出現の随伴性」では、
第一に、行動が「弱化」されるためには、まずは、その行動が頻繁に起こっていることが前提条件となります。行動が最初から起こらなければ、弱化のされようがありません。もちろん、オペラント行動というのは、全く強化されない状態でも、ごく低頻度で自発されるものですが、その程度であれば弱化してもしなくても大差はありません。弱化の対象となるのは大概、あらかじめ強化されている行動です。この点、何も前提を必要としない「好子出現の随伴性による強化」とは非対称的です。 もちろん、日常生活の中では、初めて発した行動の直後に嫌子が出現し、その行動が弱化されるということはあります。しかしその場合でも殆どは、すでに強化されている行動の般化として捉えることができます。例えば、私は昔、繋がれているタヌキの頭を撫でようとして、指を噛まれたことがありました。私にとって、タヌキを撫でるというのは生まれて初めての行動でしたが、それまでにも、タヌキによく似たイヌは何度も撫でたことがありました。イヌは撫でられるとシッポを振ってとても喜びますのでこれは好子出現となります。そのことから、「イヌを撫でる」行動は強化され、撫でる対象がイヌによく似たタヌキに般化したと考えれば、決して、初めて発した行動とは言えなくなります。 同じように、「崖沿いの道を歩いていて滑り落ちそうになった」とか「コンロにかけてあったフライパンに手を触れようとしてやけどした」といった行動も、山道を歩く、調理器具に触れるといった行動があらかじめ強化されており、その般化として生じたと考えるべきでしょう。 ということで、「嫌子出現で弱化される行動の大部分は、別の随伴性で強化されている行動である」という特徴に留意する必要があります。 第二に、「弱化」が進めば行動は起こらなくなりますので、「強化スケジュール」に対応する「弱化スケジュール」というのは原理的に起こりえません。【但し、(好子出現による)強化スケジュールに嫌子出現を付加することはできます。】 以上の非対称性を考慮しつつ、第3章の「好子出現の随伴性」の見出しを「嫌子出現の随伴性」に置き換えると、以下のようになります。
次回に続く。 |