じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
ヤブガラシの花。つる性の迷惑雑草だが花は美しい。 |
【思ったこと】 140703(木)長谷川版「行動分析学入門」第11回(1)嫌子消失の随伴性による強化(1) 今回から、基本随伴性の3番目として、「嫌子消失の随伴性による強化」について説明します。この随伴性は、「有害なモノや出来事から逃げる」という行動を強化するものであり、英語では「Escape contingency」とも呼ばれています。 私たちの社会、あるいは野生動物が暮らす地球環境は危険に満ちあふれています。しかし、いくら安全とはいえ、巣穴に潜ってじっとしているだけでは食物を得ることも配偶者を探すこともできません。今回取り上げる「嫌子消失の随伴性」は、有害で危険なモノや出来事に遭遇した時に、それから逃げたり、あるいは戦って破壊させることで身を守る行動を強化するという点で適応的と言えます。 具体的には、
「嫌子出現の随伴性による強化」は、より正確には次のように定義されています(杉山ほか, 1998、31頁)。 行動の直後にまた、「好子出現の随伴性による強化」が「正の強化(Positive Reinforcement)」と呼ばれるのに対して、こちらのほうは「負の強化(Negative Reinforcement)」と呼ばれています。 さて、以上は教科書的な説明ですが、いくつか留意点があります。 まず、「好子出現による強化」との違いです。「好子出現による強化」というのは、ある行動をすれば結果が伴う(=好子出現)、行動しなければ何も変化しないということであり、平穏な状態であることが前提となっています。人間や動物は、その平穏な状態のもとで行動を自発してもよし、しなくても差し迫って困ることはありません。これに対して、「嫌子消失による強化」というのは、まずは嫌子が存在していることが前提となります。上記の例で言えば、3.の虫さされの痒みは、虫に刺されて初めて出現する嫌子です。また、健康な人であれば、4.の頭痛は滅多に起こるものではありません。要するに、嫌子消失で強化される行動というのは、好き勝手に自発されるものではなくて、嫌子が存在している時に限って、やむなく起こす行動ということになります。 第二に、戦争状態とか飢饉のような過酷な状況を別にすれば、長時間にわたって嫌子が存在することはありえません。というか、長時間嫌子が持続的に存在しているようでは、健康は損なわれて死に至るか、もしくは、その嫌子に順応し、嫌子が嫌子で無くなるということも考えられます。 第三に、「行動の直後に 嫌子が消失したり 嫌子が減少するという経験をすると その行動は将来起こりやすくなる」という定義の「将来起こりやすくなる」という部分ですが、いま述べたように、この随伴性は、あらかじめ嫌子が存在していることが前提となっていますので、嫌子が消失した状態で「起こりやすくなる」ことはありません。上記の例で言えば、それぞれ、
次回に続く。 |