【思ったこと】
シンガポールの罰金制度
各種報道によれば、シンガポールでは、午後10時半以降翌朝07時までの屋外での飲酒を禁止し酒の販売も制限する新たな法律が4月1日から施行された。違反者には1000シンガポールドル以上の罰金または最長3カ月の禁錮刑が科されるという。
これを機会に、シンガポールですでに実施されている罰金一覧を検索したところ、以下のような内容であることが分かった。【出典はこちらと、こちら。但し、孫引きのため不正確である可能性あり。】 その中で、興味深いものをコメントつきで再掲しておきたい。【順不同】
- 他人を故意に侮辱等して畏怖、困惑、苦痛を与えたら $5000以下の罰金"
→日本でも誹謗中傷、セクハラ、パワハラなどに対する罰則が強化されているが、日本より厳しいのかどうかは不明。
- 公営住宅(HDB)から外へ物を投げ捨てたら 政府が強制的に家を買い上げる+その後5年間は安い公営住宅を買えない
→日本よりも密集しているので事故が多いための措置かと思われる。
- 車の燃料タンクは半分以上でないとダメ【『シンガポールからマレーシアに行く車』対象のハーフタンク法】
→路上でのガス欠による事故防止ではなく、国内消費を増やすための措置らしい。
- チューインガム禁止(国外からの持ち込みも禁止。医療用はOK)
→日本でも、タバコの吸い殻同様に迷惑なのがチューインガムである。公共の場でゴミ箱が撤去されていることもあるが、路上へのポイ捨ては厳しく罰するべきであろう。
- 7日以上雨水が溜まるような穴を放置したら 罰金$1000(約8万円)又は 3ヶ月以下の懲役
→蚊の発生を防ぐために有効。日本でも取り入れたらいいと思うが、「7日以上」をどう実証するのか不明。ボウフラが発生していれば罰金のほうが現実的かも。
- 選挙に行かないと罰金または投票権永久剥奪。投票率100%すか。
→棄権を権利と見なすか、義務を果たさない行為と見なすのかは議論が分かれるところだろう。
- 地下鉄(MRT)に乗ったら、ある時間内に駅からでないとだめ
→罰金なのか、運賃が増える仕組みになっているのか不明。昨年夏にギリシャに旅行した時、アテネの地下鉄は1時間半以内であれば乗降自由となっていた。初回乗車時に時刻を記録する切符になっていれば、時間割り増し制度は可能。単に、駅構内での長時間滞在者を摘発するだけであればそこまでの仕組みは不要。
- 庭の草がある長さ以上になると罰金
→景観保持はもちろん、蚊の発生防止には有効かも。オーストラリアでも、道路側の庭の整備が義務づけられていると聞いたことがある。
- 植木鉢の受け皿に水を溜めてはいけません
→家庭内の違反は取り締まれるのだろうか。
- "禁煙エリアでの喫煙 罰金$1,000(同じく約8万円)"
→日本でも自治体により罰則制度があるが、もっと強化し、ポイ捨て吸い殻を根絶してもられいたい。
- 横断歩道・歩道橋を利用せずに、そこから50m以内の場所で道路を横断
→横断歩道はともかく、歩道橋利用は高齢者や身体障がい者には負担になることがある。専用エレベーターがあれば別だが。
- 鳥へのエサやり 最高1000ドル
→日本でも、ハトへの餌やりを禁じた公園はあるが、罰金制度までは設けていなかったと思う。
- 公衆トイレで利用後に水を流さないと、最高1000ドル
→日本では流すのが当たり前だと思うが、わざわざ流さない人がいるのだろうか。公衆トイレなので、水道代の節約という理由は考えられないが。
シンガポールはあまりにも罰金対象が多いので海外から「ファインシティー(罰金都市)」と揶揄されることもあるそうだが、都市環境の美化、安全衛生、受動喫煙防止などに有用な制度は大いに推奨できる。但し、罰金というのは、その性格上、
- 第三者が公正に監視する必要
- 違反行為の証拠を裏付ける必要
があるため、
- 取締要員(警察官や専門の取締官)を配置するための人的コストがかかる
- 人に見られていないところでは違反行為が横行
といった弊害が出てくる。けっきょく、罰金制度が無くてもすべての市民がそれを履行するような倫理的コントロール(望ましい行為を社会的に称賛するようなキャンペーン、家庭内や学校での教育)のほうが長期的には有効であると言えよう。
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