じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 150522(金)「シルバーデモクラシー」と「世代別選挙区」 先日行われた大阪都構想住民投票に関連して「シルバーデモクラシー」という言葉が広まっているという。はてなキーワードでは、これは 有権者のうち、高齢者が占める割合が高いため、高齢者の意見が過剰に政治に反映されやすい状態を指す。と定義されており、1986年に刊行された内田満『シルバー・デモクラシー―高齢社会の政治学 (有斐閣新書)』が紹介されていたが、どういう議論がなされているのかについては私には全く分からない。 ただ、発端となった都構想否決が、反対者の比率の多い高齢世代の意向を反映したものなのかどうかについては疑問が残る。なぜなら、そもそも、高齢者のほうが多くの反対票を投じたというのは、NHKなどの出口調査からそう推測しているだけであって、確実な証拠ではない。そもそも、各種選挙や住民投票では投票の秘密が守られており、年齢別の支持率などは分かるはずがないからだ。また、今回の住民投票では有権者全体の14%程度に相当する30万人が期日前投票を行ったという。期日前投票に出かける人は、若者世代のほうが多い可能性があり(←高齢世代がわざわざ期日前に、離れた場所にある期日前投票所まで足を運ぶ可能性は少ないのでは)、そうなると、投票日出口調査では、高齢者の人の投票率が高いように見えてしまう。とにもかくにも、サンプリングの調査だけから、都構想投票結果をシルバーデモクラシーに結びつけるのは短絡的すぎるように思える。 それはそれとして、そもそも「シルバーデモクラシー」は悪いことなのか? 上記の「はてなキーワード」の説明のうち、前半の「有権者のうち、高齢者が占める割合が高いため、高齢者の意見が過剰に政治に反映されやすい状態を指す」になぜ「過剰に」という言葉が含まれているのか、これまた理解できない。しばしば指摘されている「一票の重み」というならそれは分かる。但しそれは、有権者の少ない地域の意見が「過剰」に反映するという意味であって、世代間の違いではない。また後半の「年齢別の投票率が高齢者が高く若者が低いのも、必要以上に高齢者に有利な政策が多くなりがちなことに影響を与えている。」というのも妙だ。若者の投票率が低いというのが事実であったとしても、それは若者の勝手であって、そのことで不利益を受けると思うなら投票に出かければいい。 世代間の不公平を是正する方法の1つとして世代別選挙区を提唱する学者もおられるという。要するに、少子高齢社会の日本では、老人がこの国を動かしている。老人は老人に有利な政策ばかりを推進しようとするので、子育て世代には不公平となっている。「老人の一票の価値を奪う改革」を奪い、有権者の年齢ごとに「青年区(20〜30代)」「中年区(40〜50代)」「老年区(60歳以上)」の3種類の選挙区を設定してはどうかといったアイデアらしい。 もっとも、これが世代間の不公平是正をもたらすのか、それとも、世代間の抗争を激化させることになるのかは不明。若者世代によって政治が支配するようになると「姥捨山法案」が可決され、高齢者はみな山に捨てられるようになるかもしれない。(ま、若者もいずれは同じ運命をたどることになるだろうが)。 それと、高齢者だからといって何も自分たちの世代だけ楽をしようと思っているわけでもなかろう。自分の身を心配すれば、けっきょくは少子化に歯止めをかける必要のあることに気づく。当然、子育て世代の優遇を支持することになるだろう。 |