じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 6月28日は梅雨前線が南下し、よく晴れた。写真は時計台に反射する西日と、写真左は南東の空に昇る月齢11.8の月。写真右は、金星(右下)と木星の接近の様子。

2015年06月28日(日)


【思ったこと】
150628(日)『嫌われる勇気』(1)

 1年次生向けのガイダンス科目で、受講生がそれぞれ1冊ずつ本を取り上げ、パワーポイントを使って紹介する課題を出している。そのうちの1冊に、

岸見一郎・古賀史健(2013).『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラ−」の教え』 ダイヤモンド社、1620円、ISBN : 978-4-478-02581-9

が選ばれた。これを機会に、アドラー流の人生観について、私なりの考えを述べておこうと思う。

 この本のことを初めて知ったのはモーサテのビジネス書ランキングである。人気を集めるビジネス書というのは通常、短期間で凋落することが多いと思っていたが、この本は、長期間にわたりTop10の上位をキープしていた。本の内容はもとより、その人気のヒミツはどこにあるのかにも興味があった。

 第一著者の岸見先生は、日本アドラー心理学会の公式サイトでも5名の指導者(田中禎氏、野田俊作氏、岸見一郎氏、中島弘徳氏、ジェーン・ネルセン氏)の一人にも挙げられており、アドラー心理学の重鎮として知られている。奥付の著者紹介を拝見したところ、1956年のお生まれというから私より4歳お若く、私と同じ大学院を満期退学されていることが分かった。もっとも、心理学専攻ではなく、プラトン哲学を専攻されていたようで、アドラー心理学の研究を始められたのは1989年からとのことであった。ちなみに、私の所属していた大学院では心理学といえばもっぱら実験心理学、ほかに、当時の教養部では社会心理学、教育学部では教育心理学や河合隼雄先生のユングの授業などがあったが、アドラー心理学の専門家はどこにもおられなかったように思う。私個人としては「心理学」というよりも「哲学」という印象が強い。

 本のカバーにはアドラーのことが「フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨匠」と称され、...」と紹介されているが、うーむ、いくら宣伝文句であるとはいえ、心理学の世界でアドラーがそこまで影響力を持っているとは思えない。ちなみに、「The 100 Most Eminent Psychologists of the 20th Century.」(詳細は、Review of General, 2002,6,139-152)によると、99人のランキング中、1位はスキナーであり、フロイトは3位、ユングは23位、アドラーは67位となっている。アメリカでの評価がすべてではないが、三大巨匠というのは大げさであるような気がする。それに、そもそも、他の心理学者と比較評価すること自体、アドラー心理学の精神に反するように思う。

 ま、それはそれとして、岸見先生が「アドラー心理学入門」というような本を出されても、失礼ながらここまで注目されることは無かったと思う。この本の魅力は、
  • タイトル「嫌われる勇気」って何?
  • 青年と哲人による対話形式。それも、青年は単なる聞き手ではなく、積極的に疑問や不満をぶちまけており、読者を代弁している
  • 理屈っぽい体系化ではなく、身近な事例について常識を覆す発想から始めている
といった点にあるのではないかと思う。

不定期ながら次回に続く。