じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 岡山の今年のソメイヨシノ開花予想日は3月26日とされているが、岡大構内では、一部の木がすでに満開状態となっている。写真上は時計台南東(理学部北西)。写真下は、理学部南にあるソメイヨシノ。理学部南の木は、例年、岡大構内で最も早く咲く樹となっている。

2016年03月22日(火)


【思ったこと】
160322(火)行動分析学における自己概念と視点取得(6)思考(2)プロンプティング、プロービング

 3月17日の続き。

 Skinner(1953)の「第16章 思考」ではまず意思決定行動が取り上げられている。意思決定はより広く捉えれば「選択」行動の1つと考えられ、シュワルツのTEDトーク「選択のパラドックス」などでもより分かりやすく論じられている。さらに広く言えば、ネズミがバーを押すか押さないかというのも選択の1つということになる。

 もっとも、この章で扱われている「意思決定」はもう少し狭い意味に限定されており、複数の行動機会のうちの1つを選ぶ選択、つまり、A室は図書室、B室はトレーニングルームというように別々の行動機会が可能な複数の部屋があって、どちらのドアを開けるかといった1回限りの選択に焦点が当てられている。さらには、志望校選択、職業選択、居住地選択というように人生を左右するような大きな決定も含まれている。いっぽう、特定の行動をするかしないか迷っている人に対して、行動を決意させるように説得するケースはここでは除外されている【日本語版285〜286頁】。

 上記のような「意思決定」過程は、素朴に考えると、「自己」なる司令塔が種々のデータを集め、比較し、最終判断を下しているようにも見えるが、スキナーは、「自己」の存在を前提にしなくても決定が可能であることをいくつかの例をまじえて説明している。

 その1つは、他者に対してだけでなく、自分自身の行動に対してもプロンプティング(prompting)やプロービング(probing)が行われるという可能性である。このプロンプティング、プロービングについてはSkinner(1953)の「第14章 複雑なケースの分析」に詳しい説明がある。
Supplementary variables are often used in controlling behavior. A familiar case is "suggestion," which may be defined as the use of a stimulus to raise the probability of a response already assumed to exist at some low value. Verbal suggestions may be classified according to the kind of supplementary stimulation. In the imitative or echoic case, we strengthen a response by supplying stimulation of the same form. We may call this formal suggestion. When we strengthen a response with nonverbal stimuli or verbal stimuli of different form, the suggestion is thematic. A crossclassification may be set up according to whether the response can or cannot be identified in advance. If we call the first a "prompt" and the second a "probe," then we have to consider formal prompts, formal probes, thematic prompts, and thematic probes.【原著213頁】
行動をコントロールするには、しばしば、さらに別の変数が用いられる。よく知られた例として、“暗示(suggestion)"が挙げられる。それはすでに低い生起率で存在していると仮定される反応の生起率を高めるためにある刺激を使用すること、と定義されるであろう。言語による暗示は、付加的な刺激作用の種類によって分類される。模倣的もしくは反響的な場合では、同じ形の刺激を提示することによって反応を強める。われわれはこれを形態的(formal)な暗示と呼ぶことにしよう。非言語的刺激あるいは別の形の言語刺激によって反応を強めるときの暗示は意味的(thematic)な暗示と呼ぶ。反応が前もって特定できるかどうかによって、交差分類される。暗示によって生じる反応が前もって特定できるものを“プロンプト”(prompt)、そして特定できないものを“プローブ" (probe) と呼ぶならば、形態的(formal)プロンプト、形態的(formal)プローブ、意味的(thematic)プロンプト、および意味的(thematic)プローブの4種になる。【平川訳】

 第4章では、続いて、これらの具体例が挙げられている。
  • 形態的プロンプト:台詞をはっきり記憶していない俳優のために舞台裏からささやく。クイズの解答者に、音声的に似ているヒントを出す(「ワシントン」がクイズ正解となっている問題で、「washing」に関連したヒントを出す)
  • 意味的プロンプト:イントラバーバル(intraverbal)の利用。(「ワシントン」がクイズの正解となっている場合に「国家の父」というヒントを出す。
  • 形態的プローブ:鐘の音が何かを呼びかけているように聞こえる。それに基づいてある行動が起こる。
  • 意味的プローブ:自由連想実験
 ちなみにこの最後の意味的プローブに関する連想実験に関しては
By asking our subject to talk in a minimal stimulating situation we generate the condition for what is known as free association, which does not necessarily exemplify the present process. The verbal behavior obtained may be maximally controlled by variables in his history, and inferences about these variables may be of optimal value; but since no supplementary source of strength is used, the case is not classified as either a formal or thematic probe. A great deal of self-probing may go on, however, when parts of such a verbal production alter other parts through supplementary stimulation.【原著、216頁】
被験者に最小の刺激事態で話すように求めることで、必ずしも現在の過程をなぞる必要のない、自由連想として知られている状況が生まれる。獲得された言語行動は、その人の履歴の中の変数によって最大限にコントロールされている。そして、これらの変数についての推測は、最適の価値のあるものである。しかし、強さの補強的根源は何も用いられていないので、この場合は形態的プローブと意味的プローブのどちらであるか分類されない。しかしながら、このような言語産出の一部が補強的刺激作用を通して他の部分を変えているときには、かなり多くの自己プローブ(self probing)が続いているのかもしれない。【平川訳】
 以上に述べられているなかで「形態的」と呼ばれているプロンプティング、プロービングは、刺激や反応の物理的類似性や般化に依存している。これに対して「意味的」のほうは、恣意的な関係づけが可能となる。関係フレーム理論を適用することで、自己プロービングのプロセスはいっそう明らかにできる可能性がある。

 次回に続く。