じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
昼食後のコーヒーには岡大生協で売っているUCCの「カフェプラス」を入れている。パッケージに書かれている「トランス・脂肪酸0.0g」の宣伝文句が決め手になっているためだが、今回、同じ商品棚に置かれていた商品を購入したところ、その文字が消えていることに気づいた。製造元の商品案内を閲覧したところ、新商品パッケージでも「トランス脂肪酸 0.0g」と表記されているようだ。なぜ、パッケージから宣伝文句が消えたのか、大きな謎である。 |
【思ったこと】 160419(火)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(3)正の強化と負の強化 第1章では続いて、「オペラント条件づけー結果による学習」の中で、強化を含む諸概念が詳しく解説されている。このうち、「正の強化」と「負の強化」については、
●「正の」=「何かをプラスする」、「負の」=「何かをマイナスする」 という区別はきわめてわかりやすい。いっそのこと「正の強化」の代わりに「加算強化」あるいは「足し算強化」、「負の強化」の代わりに「減算強化」あるいは「引き算強化」と呼べば分かりやすくなったのかもしれない。 さて、本書では、この定義に続いて、 ●「正の強化」と「負の強化」(どちらも,ある行動の生起確率を高めるプロセスなのだが)を区別することは、必ずしも重要なことではない。 というかなり思い切った考え方が表明されていた。 もっとも、実際に挙げられている例はあまり説得力を持たないように思われた【以下、趣旨を変えない範囲で改変】 私がAさんに「どうしましたか?」と尋ねたところ、Aさんは「余計なお世話じゃ!(Mind your own business!)」と叫び、その結果、私は黙ってしまった。その後、同じような場面で「余計なお世話じゃ!」と叫ぶ行動が増えた。この例では、「余計なお世話じゃ!」の直後に、私が黙って相手から注意をそらしたことが強化になっていたのであれば、「注意」あるいは「私からのうっとおしい声かけ」という嫌子が除去されたことによる負の強化と考えることができる。いっぽう、私が「これは意外だ」という驚きの表情を示してそのことが強化になっていたのであれば、意外であるという表情という好子が付加されたという正の強化が働いたことになるとされている。しかしこの範囲であれば、「私」の側が「Aさんに注意を向けている」ことと「意外であるという表情」は観察によって区別できるし、使い分けも可能である。例えば、ついたてをはさんで会話している時に同じ強化が起これば、少なくとも「意外であるという表情を示した」ことが好子になっているという可能性は除外できるであろう。 ここでは「正の」=「何かをプラスする」、「負の」=「何かをマイナスする」の区別を議論するために、以下のような別の例を挙げてみることにしたい。
上記1.では、具体的なものは「草の根っこ」となる。それが出現することによって好子として機能しているので、定義上これは、「草の根っこ」という好子が出現したことによる正の強化と考えるべきであろう。草の根っこがどんなに不味いものであっても、砂漠で遭難した状況(=確立操作)のもとでは好子として機能すると考えるべきであろう。 次に上記2.と3.の違いであるが、物理学的には、2.の「ストーブに火をつける」というのは、熱エネルギーをプラスすること、3.の「エアコン冷房のスイッチを入れる」というのは皮膚表面から熱を奪うことを意味している。しかしいずれも「不快な事態を解消する」という点では「嫌子消失による負の強化」と見なすことができる。2.の場合も3.の場合も、室内の温度が適温になった時点では、それ以上行動が強化されることはない。であるならば、熱エネルギーの変化ではなく、不快事態が除去されたと考えたほうが合理的であろう。 3.に関連するが、「暑い時にアイスクリームを食べる」という場合はどうだろうか。これも、エアコン冷房のスイッチをいれるのと同様に、不快な暑さを除去する効果はある。しかし、この場合はタンジブルな「アイスクリーム」が出現することによる強化となる。しかも、真冬の寒い時でもアイスクリームを食べることもあるので、好子出現による正の強化と考えるべきである。 以上のように、事例によっては見極めが難しい場合もあるし、プラスされたものとマイナスされたものが複合している場合もある。おそらく、これは、遮断化と飽和化という確立操作の程度にも左右されると思われる。 ということで、 ●「正の強化」と「負の強化」(どちらも,ある行動の生起確率を高めるプロセスなのだが)を区別することは、必ずしも重要なことではない。 という見解は基本的には正しい。但し、行動の結果として出現または消失する出来事は曖昧であってはならない。観察可能であり、かつ提示・除去・増減の操作が可能であるように同定していく必要がある。 次回に続く。 |