【思ったこと】 160519(木)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(26)「考える」と臨床(3)
昨日の日記で、ルール支配行動はSkinnerが使い始めた概念ではあるが、Skinner自身の説明には甚だ不十分であることが指摘されていると述べた。この不足をどう補うのかについては、次の「第4章 派生的関係反応 人間の言語の基本要素」で詳しく論じられており、けっきょくのところ、第3章の冒頭部分の指摘は、第4章の有用性を強調するための伏線として機能していると言えるようにも思う。じっさい、第4章の最後の「言語行動の新しい定義」のところでは、
...Verbal stimuli, according to RFT, are stimuli that have their effects because they participate in relational frames (S. C. Hayes, Fox, et al., 2001).
The data that this definition is based on were not available when Skinner wrote his texts about verbal behavior. However, the phenomena he described are still important even though, according to RFT, they are to be understood from this new perspective. Skinner described the difference between behavior that is governed by direct contingencies and behavior that is governed in other ways. For the latter he used the concept of "rule-governed behavior," but he never explained how such behavior takes shape. As discussed in chapter 2, there are some gaps in his analysis, and leading behavior analysts have pointed this out. These gaps are filled by RFT by way of its new definition of verbal behavior, which makes it possible to define rule-governed behavior precisely.【原書87〜88頁】
...RFTによると,言語刺激とは,それらが関係フレームに関与するからこそ効果を持つような刺激である。
この定義が基盤としているデータは,Skinnerが言語行動についてのテキストを書いたころには,まだ存在しなかった。しかし,RFTからしても,彼が説明した現象は,この新しい観点から理解される必要があるとはいえ,いまもなお重要なものである。Skinnerは,直接的随伴性によって支配される行動と,そのほかの仕方で支配される行動との違いについて説明した。後者については,彼は「ルール支配行動」という概念を用いたが,彼がそういった行動がどのようにして形成されるかを説明することはなかった。第2章で検討されたように,Skinnerの分析には不足していた部分がいくらかあり,優れた行動分析家たちがこのことを指摘してきた。これらの不足部分は,RFTの新しい言語行動の定義によって埋められ,そのことで,ルール支配行動は,正確に定義できるようになる。【122頁】
というように、関係フレーム理論(RFT)の有用性が強調されている。
さて、元の第3章に戻るが、この章では続いて、認知療法の特徴が行動分析学のそれと対比・考察されている。
まずは「Men are not moved by things but by the views which they take of them" (Beck, 1976, p. 47)/人は,物事によって動かされるのではなく,物事の見方を通して動かされる」という立場から、「クライエントが自分自身に起こったことについて、その考え方を再検討できるように(現実の歪んだ解釈を修正する)援助することである。」というアプローチについて。本書では、こうした認知療法モデルがいくつかの臨床疾患において好ましい効果をおさめてきた点を肯定的に評価しつつ、それでもなお、行動分析学同様の緊張とジレンマを抱えていると論じられていた。
伝統的な応用行動分析では、レスポンデント、及びオペラント行動を強化の随伴性によって当該行動を変容させることを主たる課題としてきた。いっぽう認知療法モデルは、認知を変えることが改善につながると考えてきた。ルール支配行動の成立や機能を適確に把握した上で臨床場面に導入できれば、結果的に、「認知の歪み」として語られてきた諸問題をより有効性を解決できる道を開くことになるだろう。
次回に続く。
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