じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 6月23日は高知方面への日帰り出張となった。写真は、初めて乗車した、土佐くろしお鉄道阿佐線(「ごめん・なはり線」)の車両。駅キャラクターが描かれていた。また、車両右側(海側)には展望デッキが設けられており、太平洋を一望できた。

2016年06月23日(木)


【思ったこと】
160623(木)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(54)派生的関係反応(26)刺激間のさまざまな関係(5)

 昨日に続いて、

Dougher, M. J., Hamilton, D., Fink, B., & Harrington, J. (2007). Transformation of the discriminative and eliciting functions of generalized relational stimuli. Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 88, 179-197.

の内容紹介の最終回。

 実験3は、実験1と実験2から導かれた結論に対する以下のような疑問点を解消する目的で行われた。実験1と実験2では、見本刺激は、比較刺激の物理特性(相対的な大きさ)に対応して恣意的に関連づけられていたが、これらの機能の変換は、比較刺激間の派生的関係に基づくものではなく、比較刺激の個別的な特性に直接的に結びついていた可能性がある。すなわち、刺激Bに対する派生的関係ではなく、Aの機能とCの機能の変換が独立的に発生していたとしても同じ結果を生じるはずではないかという疑問が残っていた。

 この実験の参加者は7人(男6、女1)であり、実験1や実験2と同じ方式で集められた。実験装置等も同様。実験時間は1〜1.5時間程度。実験はPhase 1とPhase 2から構成されていた。

 このうちPhase 1は、実験1と同様の関係づけ訓練となっていた。すなわち、見本刺激がAであった場合には一番小さい図形、Bの時は中くらいの図形、Cの時は一番大きい図形を選ぶと正解となる。なお、実際の刺激A、B、Cは、「三」、左右逆の「Z」、上下逆の「L」のような形のシンボルであった。

 続くPhase 2は、2つの段階に分かれていた。そのうち前半では、毎回の試行の際、画面上段に数字、中段には「<」、「=」、「<」という等号・不等号のうちのどれか、下段には3個の数字が提示された。3個の数字は、上部の数字より小さい、同じ、大きい値となっていた。例えば、画面上段には「3」、中段には「<」、下段には「3」、「1」、「5」が表示される。参加者は、カーソルキーによりそのうちのどれかを選択する。例示された課題は「3は○○より少ない」を意味しており、下段から「5」を選ぶと正解となる。6連続試行正解でこの訓練は終了【実際には、全員エラーなし】。

 Phase 2の後半では、前半で用いられた数字の代わりにPhase 1の関係づけ訓練で使用されていた刺激A、B、C【実際には「三」、左右逆の「Z」、上下逆の「L」のようなシンボル】、あるいは、サンプル刺激で用いられた刺激の組合せ、さらには参加者にとって新奇となるような図形刺激が提示された。またこの段階では正解・不正解のフィードバックは一切行われなかった。

 Phase 2の後半の最初のテスト18試行はサンプル試行であり、ここでは刺激Bが見本刺激として画面上段に提示され、中段には「<」、「=」、「<」という等号・不等号のいずれか、画面下段には刺激A、B、Cが比較刺激として提示された。Phase 1で関係づけ訓練が完成していれば、中段に「<」が表示された時の正解は「C」ということになる。

 Phase 2の後半の残りの試行では新奇な刺激が、最初は比較刺激として、後には見本刺激と比較刺激の両方に含まれるようになった。例えば、上段に見本刺激として刺激Aが提示され、中段に「>」、下段に刺激A、刺激B、新奇刺激Dが並べた提示されたとする。Phase 1で関係づけ訓練が完成していたとすると、下段の3つの選択肢のうち、刺激Aと刺激Bは学習されていた大小関係に基づけば誤答であることが明白なので、消去法によりDが選択されるであろう。このDは「A-」と呼ぶことにする。さらにDが見本刺激として上段に提示され、下段に刺激E、刺激A、刺激Dが提示された場合は、消去法により今度はEが正解として選択されるであろう。これは「A-」よりさらに小さいという意味になるので「A--」と呼ばれる。逆に、「C」が見本刺激として提示され、比較刺激として刺激Cや新奇刺激Fが提示された場合は、消去法により刺激Fが選択されるである。これはCより大きいという意味で「C+」というように呼ばれる。さらに刺激Fが見本刺激となり、比較刺激として刺激Fや新奇刺激Gが提示された場合は、消去法でGが選択される。これは「C++」と呼ばれる。

 Phase2の後半ではこのように、消去法により新奇刺激に対する「大小」関係の判断がテストされたが、実験参加者は、さまざまな課題で高い正答率を示した。このことから、
These findings show that the relational training used in the present experiments not only can transform the functions of the stimuli used as samples in that training, but can establish a set of derived relations among them. When directly assessed, participants reported that A was less than B, and B was less than C. Moreover, these derived relations were used to derive additional relations among a set of novel shapes to produce an arbitrary size ordering of seven abstract forms.
これらの結果は、本研究で実施された関係づけ訓練が、訓練時に比較刺激として用いられた刺激の機能を変換できるばかりでなく、それらの間の一連の派生的関係をも確立できるようになるということを示している。直接尋ねた時にも、参加者たちは「刺激Aは刺激Bよりも小さい」、「刺激Bは刺激Cより小さい」と報告していた。さらには、これらの派生的関係は新奇な図形にたいして更なる関係を派生するさいにも利用され、7種類の抽象図形について恣意的な大小関係をもたらした。
というように結論されていた。

 以上3つの実験に関して疑問として残るのは、「大小関係」が本当に大きさの大小であるのか、それとも序列の関係に過ぎないのかという点であった。バー押し数にまで違いが生じるというのは明らかに「大小」であるが、本当にそこまで変換するかどうか、別の課題においてもさらに検証する必要があるように思う。

 もう1つは、実験参加者たちが、実験課題について、訓練過程ではなく、日常生活上の多様な経験に基づいて「これは大きいという意味だ」というようなルールを生成し、そのルールに基づいて行動していたのではないかという点である。もっとも、大学生を対象に実験する限りは、その分離は難しいようにも思われる。

 次回に続く。