じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 7月11日の夕刻、岡大構内・座主川遊歩道東端にかかるコンクリートの橋の上に長さ1〜2メートルほどのアオダイショウがいた。特に逃げる様子もなかったのでそのまま渡ったところ、数10cmに近づいたあたりでやっと動き出して橋の下に隠れた。

 岡大構内では毎年数回程度、蛇を目撃する。文学部西側の空き地でも、かなり大きい蛇に遭遇したことがあった。

警告蛇の嫌いな方は、左の画像を決してクリックしないでください!

2016年07月11日(月)


【思ったこと】
160711(月)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(66)アナロジー、メタファー、そして自己の体験(2)比喩から学ぶ心理学

 7月10日の続き。今回は少々脱線するが、この章で取り上げられている「メタファー」に関連して、

田邊敏明(2000).『比喩から学ぶ心理学 心理学理論の新しい見方』. 北大路書房.ISBN978-4-7628-2175-2 C3011

という本について簡単に言及させていただくことにしたい。

 目次に記されているように、この本は第一部と第二部に分かれており、第一部の序章では心理学で比喩を用いる意義が強調されたあと、心理学概論的な構成に従って、心理学の各領域を「比喩から見た○○」という形で分かりやすく紹介している。第二部は「第11章 心理学全領域を扱う比喩」, 「第12章 領域別における比喩」という2章から構成されており、よりレベルの高い理論的な問題を扱っている。なお、同じ著者による、

心の理論を比喩から学ぶ試み : 試案からハイパーテキスト学習への展開

という論文の英語タイトルが「The Prospect of learning psychological theories by metaphors. : Development from a pilot plan to hypertext learning.」となっており、「比喩」に対応する英語が「metaphors」とされている。また以下に引用する部分でも「比喩(metaphor)」と記されていることからみて、ここでいう「比喩」は「メタファー」と同義に扱われていると見なすことができる。

 このうち、第一部の序章では、冒頭で、
 われわれは,理解していないことばに出くわす時,誰かにその意味をたずねたり,辞書に当たったりする。そして,他のことばによって理解できるまで絶えずさぐっていく。また,われわれは,経験したことが理解に値すると感じる時,何か類似した例を探すであろう。比喩的,類推的な思考が知識の獲得と拡張に基礎的な役割を果たすという提唱は数多い。
 心理学についてもその例にもれない。心の世界は物理的世界と違ってつかみにくい。そこで心理学では,仮のモデルで心を表現する仮説構成体(Hypothetical construct)なるものを用いる。心理学理論のすべてが,そのような見立てと言ってよい。したがって,研究者によっても,あるいは時代によっても心の見方は異なることになる。そうした見方の中でも代表的なものが比喩(metaphor)である。【以下略】
というように、比喩を用いることが理解を学問的関心を高め、広げる上で大いに意義深いものであると論じられている。そして、特に注目したいのは、序章の最後の段落で、
 そこで本論では,まず第I部として,初学者にもなじみのある心理学概論で扱われている理論を比喩から眺めてみたい。それもペパー(Pepper, 1942)のフォーミズム,機械論,有機体論,文脈主義という世界仮説に基づいた4分類からまとめてみたい。
というように、ペパーの世界仮説に言及している点である。この世界仮説については、第11章の「4節 世界事象の視座としての根元的比喩」のところで詳述されている。
 少し抽象的になるがサービン(Sarbin, 1986)による根元的比嶮(root metaphor)がある。これは,ペパー(Pepper, 1942)の世界仮説(world hypothesis)を基とし,なかでも世界事象を見ていく視座として“語り(narative)", いわば文脈主義を重視している。この世界仮説とは,存在する現象すべてに共通して見られる原理のことで,サービン自身は心を機械から見ることから脱し,文脈から見るべきと唱えた。
なお、上記の節の一部は

Sarbin,T.R. 1986 The narrative as a root metaphor for psychology. In T.R. Sarbin.(Ed.) Narrative Psychology. NewYork: Praeger. 【長田久雄(訳) 1991.心理学の根元的メタフアーとしての語り.田中一彦(編)現代のエスプリ286 メタファーの心理. 至文堂.

からの著者(田邊氏)による要約引用となっている。

 上記の御著書でまことに残念に思うのは、機能的文脈主義としての徹底的行動主義に関する記述が見られないという点であった。もっとも、私が知る限りでは、行動分析学の学界で世界仮説に言及されるようになったのは、

Hayes, S.C., Hayes,L.J., & Reese, H.W.(1988).Finding the philosophical core: A review of Stephen C. Pepper's World Hypotheses: A Study in Evidence. Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 50, 97-111.

のあたりからであり、RFTを体系化した、

Hayes, S. C., Barnes-Holmes, D., & Roche, B. (Eds.). (2001). Relational Frame Theory: A Post-Skinnerian account of human language and cognition. New York: Plenum Press.

は、田邊先生の御著書より1年後に刊行されていることなどを考えれば、徹底的行動主義を機能的文脈主義として特徴づけることは、2000年の時点ではまだ時期尚早であったという可能性もある。

次回に続く。