じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 7月中旬に入り、夕刻になってから図書館前の迷惑駐輪が増えてきた。試験勉強で図書館を利用する学生が増えたせいかもしれない。駐輪スペースは図書館裏にもあるはずだが、どうしても、入口近くに駐めたがるようである。

2016年07月13日(水)


【思ったこと】
160713(水)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(68)アナロジー、メタファー、そして自己の体験(4)アナロジーとメタファーの違い

 7月12日の続き。

 アナロジーについては心理学的立場からさまざまな理論が提唱されてきた。RFTの視点から新たな体系化をはかろうとする場合、それによって、どのような現象が整合的に説明できるのか、どのように応用範囲を広げることができるのか、がカギとなる。RFTの視点からの実験的検討は数多く行われているが、本書ではごく簡単な引用にとどまっている。いずれも、検索語に著者名やタイトルを入れることにより原文のPDFファイルを閲覧することができる。主な関連文献は以下の通り。
  • Stewart, I., Barnes-Holmes, D., Roche, B., & Smeets, P. M. (2002). A functional-analytic model of analogy: A relational frame analysis. Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 78, 375-396.
  • Stewart, I., Barnes-Holmes, D., & Roche, B. (2004). A functional-analytic model of analogy using the relational evaluation procedure. Psychological Record, 54, 531-552.
  • Lipkens, R., & Hayes, S. C. (2009). Producing and recognizing analogical relations. Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 91, 105-126.
  • Carpentier, F., Smeets, P. M., & Barnes-HolmeS; D. (2002). Matching functionally-same relations: Implications for equivalence-equivalence as a model for analogical reasoning. Psychological Record, 52, 351-312.
  • Carpentier, F., Smeets, P. M., Barnes-Holmes, D., & Stewart, I. (2004). Matching derived functionally same relations: Equivalence-equivalence and classical analogies. Psychological Record, 54, 255-273.

 続いて、原書96頁(翻訳書133頁)以降では、メタファーについて詳述されている。「メタファーはある種のアナロジーである」とした上で、それらの区別について以下のように述べている。
In the examples of analogies given earlier, there is symmetry between the nonarbitrary relations used in the analogy. In the analogy "An atom is like the solar system," the atom is the target and the solar system is the base, but the analogy could work in the other direction. The nonarbitrary spatial relation applied in the analogy (one part orbits another) is the same for both of the relational networks....【中略】...
Compare this to the metaphor "To argue with him is to be run over by a steamroller." The nonarbitrary relation that is applied in this metaphor - the similarity between two events involving standing in the way of an irresistible force - is not a symmetrical relation. One of the two relational networks being related has more of the key quality than the other network does. The base (being run over by a steamroller) has this quality to a greater extent than does the target (arguing with a certain person). True analogies can be used in both directions, as shown in the examples above. This is not the case with metaphors. If we were to turn the described metaphor around and say, "To be run over by a steamroller is to argue with him," this metaphor probably won t function well. The base and the target cannot switch places....【以下略】
先にいくつか挙げたアナロジーの例では,その中で使われている非恣意的な関係同士の間に対称性がある。「原子は太陽系のようである」というアナロジーでは,原子がターゲットで太陽系がペースであるが,アナロジーは逆に働くこともできる。アナロジーの中で利用されている非恣意的な空間的関係(ある部分が別む部分の周りを回る)は,どちらの関係ネットワークについでも同じである。...【中略】...
 これを,「彼と議論することは,ロードローラーに轢かれるようなことである」のメタフアーと比ぺてみよう。このメタファーで適用されている非恣意的関係 − 抗しがたい力の前に立ちはだかることに関連した2つの出来事の間の類似性 − は, 対称的な関係ではない。ここで関係づけられている2つの関係ネットワークのうちの片方には,もう片方と比ぺて,より多くの鍵となる特質(key quality) が含まれている。ベース(ロードローラーに轢かれること)は,ターゲット(ある人と議論すること)よりも,この特質をより多く持っている。真のアナロジーは,先の例で示されたように,双方向に用いることができる。これは,メタフアーの場合には当てはまらない。仮に,私たちがここで扱っているこのメタファーを反転させて,「ロードローラーに轢かれることは,彼と議論するようなことでである」と言ってみたとしても,このメタファーは,おそらく,うまくは機能しないだろう。ペースとターゲットは, 入れ替えることができない。...【以下略】
 そして、「メタファーの中の2つののネットワーク同士の間にある非恣意的な類似性は,アナロジー的な類似性だけでは実現できないくらいに,機能の変換を促す可能性がある。」としてその有用性を強調している。ACTのエクササイズで多用される種々のメタファーもこうした根拠に基づいていると言うことができるだろう。

次回に続く。