じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 真夏の南の空で、火星、土星、アンタレスの作る三角形が明るく輝いている。このあと8月12日には、月がこの三角形の北側を通過する。この日はまた21時にペルセウス座流星群極大となっており、月の入り後には条件最良で観察することが可能。

2016年08月08日(月)



【思ったこと】
160808(月)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(88)アナロジー、メタファー、そして自己の体験(24)「般化オペラント」についての復習(7)「より高い」という関係反応

 昨日の続き。

Hayes, S. C., Barnes-Holmes, D., & Roche, B. (Eds.). (2001). Relational Frame Theory: A Post-Skinnerian account of human language and cognition. New York: Plenum Press

の24頁からは関係反応(Relational Responding)の実験事実が紹介されている。まずは、アカゲザルにおける垂直線分の高さについての相対比較である。例えば、高さ5cmと7cmが同時提示された時には、「より高い」7cmを選ぶと正解、高さ10cmと12cmが同時提示された時には「より高い」12cmを選択すると正解になったとする【数値は仮想】。次に、12cmと15cmを提示したとする。線分の絶対的な長さ(高さ)が手がかりになっているとするなら、サルは、12cmのほうを選ぶはずである。なぜなら、サルにとって12cmは過去に強化された刺激であるのに対して、15cmは一度も強化されたことのない新奇な刺激であるからだ。しかるに、もしサルが15cmのほうを選んでいたとすれば、これは、線分の絶対的な長さ(高さ)ではなく、「より高い」という相対的な関係に基づいて反応されたという証拠になる。

 こうした証拠はずっと以前より種々の動物で確認されており、さまざまな説明がなされてきたが、反応クラスや般化オペラントであると考えればまことにスッキリする。当然、反応クラスは、形態的類似性ではなく機能的に定義される必要がある。

 スキナー自身(Skinner, 1953)、動物がこうした大きさや長さの相対的関係が手がかりとなることの適応的意義について言及している。
Actually it is possible to condition an organism either to choose the larger of two objects or to choose a particular size no matter what the size of an accompanying object. Similar conditioning begins very early in the history of the individual, and the behavior which predominates when a test is made will depend upon such a history. The relational case is important in most environments. As the organism moves about in space, reinforcements are generally contingent upon relative, rather than absolute, size (1953, p. 138)
実際には、2つの対象のうち大きい方を選択するようにも、あるいはどのようなサイズの組み合わせであろうと、特定の大きさのサイズのものを選択するように条件づけることは可能である。これと似たような条件づけは、実は人間のごく幼い時期において始まっている。そして、テストが行なわれたとき、優勢である行動はそうした過去の歴史に依存している。こうした関係のとらえかたは、多くの環境において重要である。生活体が生活空間を変えるとき、通常は絶対的なサイズよりも、相対的なサイズに基いて強化されている。【翻訳書, 161頁。訳は高山巌氏による】
なお、Hayesらの引用はこの部分だけとなっているが、Skinner(1953)の次の段落では以下のような記述がある。
Stimulus induction on the basis of a "relation" presents no difficulty in a natural science if the relation can be described in physical terms. Where this appears not to be the case, we have to turn to other possibilities - for example, the mediating behavior just discussed. Even such relatively simple organisms as the pigeon may respond appropriately to new stimuli on the basis of relative size, relative intensity, relative position, and so on. They can also be conditioned to ignore any of these properties and to transfer a response on the basis of some other property. The relevant properties are all capable of physical specification.
“関係”に基づいた刺激誘導を提示することは、もしもその関係性が物理的な用語で記述できるならば、自然科学においては難しいことではない。このような場合と違うときには、われわれは他の可能性を考える必要がある。例えば、少し前に議論した介在行動はその一例である。ハトのような比較的単純な生活体でも、サイズや、強度あるいは位置などの相対的関係が新しい刺激に対して適切に反応する。また、これらのいかなる属性に対しても無視するように条件づけることができる。そしていくつかの他の属性の基盤にその反応を移すこともできる。関係のある属性はすべて物理的に明細化できる。


 次回に続く。