じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 小倉城近くにある常盤橋。昨日取り上げた長崎街道は、ここの西詰めが起点になっているという。とりあえず起点から大門の近くまで歩いてみたが、案内板に記された10箇所のうち実際に確認できたのは常盤橋、小倉県庁跡(石碑のみ)、明治の黒いポストの3箇所のみであった。次回は全部回ってた上でもう少し西方向まで歩いてみようと思う。

2016年11月6日(日)



【思ったこと】
161106(日)関係反応についての講義メモ(1)関係反応の定義/複合刺激との区別

 再来週以降の授業で「関係反応」の話題を取り上げる予定なので、これを機会に分かりにくい点を整理しておこうと思う。
  1. 関係反応の定義
  2. 複合刺激との区別
  3. 実験による検証方法、あるいは類似した日常場面
  4. 対応づけと、純粋な関係反応
  5. 派生的関係反応と般化オペラント

 まず、関係反応の定義であるが、少し前の紀要論文では暫定的に以下のように定義したことがあった。
単一の刺激の絶対的な特性に対応した反応ではなく、複数の刺激間の相対的な特徴に対応して生じる反応
 この定義で重要なポイントは、「複数の刺激間の相対的な特徴に対応して」というところにある。

 単一の刺激が複合した場合にも複合刺激特有の機能を有する場合があるが、これは必ずしも関係反応とは言えない。

 例えば、「青信号の時に横断歩道を渡る」という場合は青信号は、じつは「自分が横断する方向に取り付けられている」という文脈のもとでの、「歩行者用信号機」と「青いライト」の複合刺激となっている。自動車用の信号機が青に点灯していても渡ることはないし、歩行者用信号機が赤や黄色の時に渡ることもないので、「単一の刺激の絶対的特性に対応した反応ではない」という点では関係反応の基準を部分的に満たしているようにも見える。しかし、信号機や青いライトは依然として横断行動の弁別刺激として機能しており、その意味では「複数の刺激間の相対的な特徴に対応して」という基準は満たしておらず、横断行動を関係反応に含めることはできない。

 もう1つ、サカナ偏の漢字を例に挙げておこう。例えば、鯵、鯖、鯛、鰯、鰆といった漢字では、「つくり」の部分の「参」、「」、「周」、「弱」、「春」はそれぞれ、対応する魚とは全く無関係の意味をもつ漢字であり、この意味では「単一の刺激の絶対的特性に対応した反応ではない」という基準を満たしているように見える。しかし、「魚」という偏のほうは「つくり」と複合されても依然として「魚の一種である」という意味を保有しているし、どっちにしても「複数の刺激間の相対的な特徴に対応して」という基準は満たしていない。

 いっぽう、引用元の論文では、以下のような例を挙げている。これらは関係反応の基準を満たすものである。
 具体例としては、相対的関係自体を手がかり(弁別刺激)とした以下のような反応がこれに含まれる。
  1. 2つのうち、より大きいものを選ぶ
  2. 2つのうち、先に出現したほうを選ぶ
  3. 当該の目印より左側にあるものを選ぶ

 いずれも、個々の刺激の絶対的な特性ではなく、2つの刺激の相対的な関係を手がかりにしないと正しく反応することができない。
 関係反応に関する代表的な実験の1つに条件性弁別がある。例えば、

 ハトの実験で、パネルキー2個に、大きさの異なる長方形をそれぞれ提示し、
  • 赤いライトがついた時→大きい長方形のキーをつつくと強化、小さいほうをつつくと無強化
  • 青いライトがついた時→小さい長方形のキーをつつくと強化、大きいほうをつつくと無強化
という訓練であり、ハトが長方形の絶対的なサイズではなく、相対的な大きさを手がかりにして正しく反応できるようになれば、関係反応が形成されたということができる。

 上記において訓練時とは異なるサイズの長方形2個が提示された場合にも、正しく反応することができたとする。これは「移調」と呼ばれることがある。また、この場合、「より大きい」、「より小さい」という、比較に基づく選択ができていたということができる。

 なお、純粋な関係反応とは、大きさ、時間の前後、位置といった抽象的な特徴のみを手がかりとして反応するという意味になるが、後述する関係フレーム理論では、具体的な刺激が何らかの形で「関係づけられる」、「分かちがたく結びつけられる」ことに焦点があてられる。抽象的な関係自体を手がかりとした反応と、刺激間を関係づける反応とを区別しておく必要がある。
 以上の暫定的定義がなぜ暫定的であるかという点については、リンク先の論文の以下のような脚注を参照されたい。
そもそも何かを定義するとは、何かに関係づけることである。よって、「関係」自体を定義することは同義反復に陥る。ここに記した暫定的定義においても「複数の刺激間の相対的な特徴」というのは「関係」そのものを意味しており、「関係反応とは関係に対応して生じる反応である」と言っているに過ぎない。「暫定的な定義」と書いたのはこうした理由による。但し、この定義により、単一の刺激に対する反応は除外されており、「何が、関係反応でないか」は区別できるだろう。なお、ヘイズ・ピストレッロ(2009)では「関係づけるとは、ある事象に対して、他の事象の観点から反応するということである。」と定義している。


次回に続く。