じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 岡山では相変わらず寒い日が続いており、週間予報では2月8日から2月13日のあいだ、最低気温が0℃以下、最高気温は一番寒い日で4℃どまりと予想されている。
 写真は、この寒さの中でも緑をつけているクスノキ。夕日が射し込み輝いている。

2017年2月6日(月)




【思ったこと】170206(月)ACTの価値論(12)価値vs.ゴール(8)

 昨日の続き。「価値とゴールの区別に関する5つのキーポイント」のうち3番目は、

●価値に優先顧位をつける

であった。これに関しては、
  1. 私たちがいくつ価値を持っているとしても,そのすべてが常に利用可能であるので,今,この瞬間はどの価値に従って行動するのか,優先順位をつける必要がある。
  2. 例えば,両親を愛し,大切にすることに価値を置いている場合でも,憎しみを向けられ,虐待される状況が続いているのであれば,その価値との接触を断つことになるだろう。自分の身を守るという価値や自分を慈しむという価値が優先されるためだ。だが,両親を愛し大切にするという価値が消えたわけではない。ただ優先順位が変わっただけである。
  3. 心理学者ジョン・フォーサイスは,この点をうまく捉え,価値とは立方体のようなものであると言っている。立方体は,どのように置いても,はっきり見える面と全く見えない面ができる。見えない面は消滅したわけではなく,ただ,その置き方だと見えないというだけである。立方体の置き方が変われば,また新しく見える面ができ,また新しく見えない面ができる。
 これらのうち3.の「心理学者ジョン・フォーサイス」というのは、訳注にもあるように、

ゲオルグ・H・アイファート、ジョン・P・フォーサイス 著、三田村仰、武藤崇 監訳 (2012). 不安障害のためのACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)実践家のための構造化マニュアル. 星和書店.

の著者の一人として知られている。「立方体」というのは1つのメタファーであるが、何かを優先させるという場合に、取り残された選択肢は消滅するのではなく、置き方を変えればまた見えてくるということをよく言い表していると思う。

 行動分析学の基本原理から言えば、1.の「優先順位」をつけるということが個人の「自由な」判断でどこまでできるかどうかは疑わしいところがある。もともと、複数の選択肢のうちどれを選ぶかというのは、偶然的要因(たまたま接触する機会があった)にも支配されるが、基本は、その選択肢を選ぶことでどれだけ強化されるのかにかかっているからである。もっとも人間の場合、選択率は単純に強化率に比例するわけではなく、ある種のルールによって支配されているところがある。このルールの軌道修正が可能であれば優先順位を変えることは可能であろう。また、「立方体」メタファーにもある通り、選択肢全体を別の角度から評価し、優先順位の低かった側面に注意を向けることも可能である。「注意を向ける」というのは接触機会を増やすことにつながるので、その選択肢が強化的である限りはその優先順位を高めることが可能となる。

 次回に続く。