【思ったこと】170213(月)ACTの価値論(17)価値と人生(3)
2月10日の続き。
ハリスの訳本の348頁以降には、「他人を喜ばせる」ことや「他人を変える」ことをゴールとしているクライエントがいた場合の対応策が記されていた。根本思想は異なるが、このあたりは、『嫌われる勇気』の発想と似ているようにも思える。
351頁には価値についてのまとめが記されている。以下、要約引用させていただく。
- 専門的に言うと,価値とは「継続的な行動が持っている包括的で,望ましい性質」のことである。
詩的な言い方をすれば「この星の上で過ごす短い時間をどのように過ごしたいか」という,胸の奥深くに存在する願望である。
- 比喩的に言えば,価値とはコンパスのようなものである。価値は,私たちに方向を示し,進路を見失わないようにしてくれる。
- クライエントを価値と接触させるのは簡単なことではない。さまざまなタイプの誤解や誤認にたびたび遭遇する。最も多いのは,価値とゴールの混同である。さらに,フュージョンや回避という障害にもよくぶつかる。その結果,価値と脱フュージョン,アクセプタンスの間を行ったり来たりすることになるだろう。
- しかし辛抱強く続けていけば,多くの場合,クライエントが自分の心に触れるのを援助することができる―そして,実際にその場面に立ち会うことができると,実に感動的である。
上記のうち、1.と2.は価値の性質を端的に表しておりよく理解できる。3.も留意点として理解できるのだが、4.は、美しい言葉で飾られているものの具体性に乏しい。この連載でも何度か言及したが、行動分析学的に言えば、価値の根源は、好子出現の随伴性にあり、
- 短期的(短絡的、断片的)な強化ではなく、中長期的、方向づけられながら強化されていくこと。
- より良質な習得性好子の形成
- 好子出現のパターン(=適切な強化スケジュール)。おそらく、定比率スケジュールにかなり近い変比率スケジュール、すなわち、努力の積み重ねに応じて好子が出現するが、ある程度、その確率や大きさに変化があるような強化スケジュールで強化されていること。
といった特徴を備えていることが、価値の性質を満たしているように思われる。4.の「辛抱強く続ける」というと精神主義的なようにも聞こえるが、それよりも、上記の要件を満たしているような価値への接触機会を増やすことが肝要ではないかと思う。
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