じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 時計台前のアスファルト道路と敷石の間の僅かの隙間から花を咲かせている「ど根性」スミレ。 もっとも、スミレは、細かい種が側溝や石垣の隙間などに入り込みやすくなっている。「ど根性」というより、生育しやすい場所に根をおろすことのできた「強運」スミレと言うべきかもしれない。

2017年3月6日(月)



【思ったこと】170306(月)オドノヒュー&ファーガソン『スキナーの心理学』(18)第3章スキナーの背景(12)ダーウィン(3)

 3月5日の続き。

 第3章の終わりの部分では、スキナーの進化生物学や生理学に対する考え方について、いくつかの誤解がある点が指摘されている。【以下、長谷川による要約・改変】
  • スキナーが進化論に傾倒しているのは、それぞれが維持と発展に有意義なので、進化生物学と行動心理学を結びつけているにすぎない。
  • 彼は、生活体は常に環境との相互作用を保ち、その相互作用には行動のレベルと、それに同時進 行する生理的活動のレベルの2つがあると考えていた。
  • 生理的活動は神経、筋肉、生化学などから充分に研究する必要があり、やがてはその過程が詳細に解明されるだろう。しかしそのためには、環境一行動関係に基づく、巨視的レベルの行動分析が必要である。巨視的レベルの行動分析も、生理学的メカニズムの分析も、等しく重要。
  • 行動に含まれている生理過程が解明されれば、行動は解明できるという考え方は還元論の誤謬である。
 こうした考え方は、最近の脳科学や人工知能開発、ロボット工学にも当てはまる。環境要因が行動にどのように影響を及ぼすか、また、マクロな行動が環境に働きかけ、その結果によってどう変容するのかを明らかにすることが発展を支えているように思われる。

 第3章の最後の部分では、ダーウィンの進化論の影響が以下の4点にまとめられていた。【長谷川による改変あり。】
  • ...【A】ll species are the products of evolution. at is, historically they have been biologically and behaviorally shaped by their environments.
    あらゆる種は進化の産物であり、種は過去において、生物としての側面も、行動という側面も、環境によって形成してきたものである。
  • The answers to many questions about organisms can be found in evolution. Organisms have certain phenotypic characteristics, certain reflexes, certain learning capabilities, and certain societal practices because of the selective action of the environ ment.
    生活体に関する多くの疑問の答えは、進化の過程の中に見いだすことができる。進化の過程における淘汰によって、生活体は特定の具体的特性を、特定の反射メカニズムを、特定の学習能力を、そして特定の社会行動を持つに至ったのである。
  • Operant conditioning arose because of the survival advantages it bestows. It allows organisms to be sensitive to environmental selection that can be more transitory and variable,
    オペラント条件づけも、それがもたらす生存上の利点によって成り立つようになった。【オペラント条件づけによって、より短期的かつめまぐるしく変化する環境の淘汰作用に対して、より適確に対処することができるようになった。】
    ←【 】部分は翻訳書では訳し漏れになっているようだ。
  • Operant conditioning mirrors natural selection. That is, environmental contingencies selectbehaviors from some initial behavioral distribution.
    オベラント条件づけは自然淘汰の反映である。すなわち、環境内の随伴性が混沌状態の行動から特定の行動を抽出したのである。


 次回に続く。