じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 この季節、ソメイヨシノの花に注意が向いてしまうが、モミジの小さな花と新緑もなかなか趣がある。

2017年4月5日(水)



【思ったこと】170405(水)関係フレーム理論をめぐる議論(3)

 行動変動性の実験では、「直近の選択反応(もしくは反応系列)とは異なる選択をすると強化」というの手続が採用されることがある。このような強化手続のもとでは、生成された反応系列は結果としてよりランダムな系列に近くなる。(長谷川, 2008参照)[※1]。

 行動変動性は、少なくとも形式上は、直前の反応(反応系列)と次の選択との関係反応と見なすことができるため、関係フレーム理論やACTの入門書では関係反応の事例としてしばしば紹介されている(例えば、Hayes, Fox, Gifford, Wilson, Barnes-Holmes, & Healy,2001)[※2

 もっとも、選択反応の系列が結果としてランダムになったからといって、それらが過去反応との関係反応(過去反応と異なる選択をするという関係反応)であるのか、それとも、その生活体の選択にもともと揺らぎを示す傾向があってその特性が強化されたのかどうかは直ちには判別できない[※3]。要するに、手続上「過去反応と異なる選択をするという関係反応」を強化したとしても、そこで作用している制御変数が手続的定義通りであるとは必ずしも言えない点に留意する必要がある。

 佐藤(2007、7頁)[※4]が、弁別刺激の定義に関して
手続き的弁別刺激と機能的弁別刺激のどちらがより重要であろうか。行動分析学の目標は、行動の制御変数を同定することであり、弁別刺激は主要な制御変数の一つであるから、機能的弁別刺激がより重要であることは言を俟たないであろう。

と述べているように、手続的に定義された条件や変数によって行動に変容が見られたとしても、その変容が手続に定められた変数の直接的な効果であるとは直ちには言えない点に留意する必要がある。

    ※1]長谷川芳典 (2008). 乱数生成行動と行動変動性:50年を超える研究の流れと今後の展望. 行動分析学研究, 22, 164-173.
    ※2]Hayes, S. C., Fox, E., Gifford, E. V., Wilson, K. G., Barnes-Holmes, D. &. Healy, O.(2001). Derived relational responding as learned behavior. In S. C. Hayes, D.Barnes-Holmes &. B. Roche (Eds.) Relational frame theory: A post-Skinnerian account of human language and cognition. New York: Plenum Press.
    ※3]長谷川芳典 (1992). 3項選択行動の柔軟性に及ぼす教示内容と記憶負荷の効果.岡山大学文学部紀要, 17,99-109.
    ※4]佐藤方哉(2007).見本合わせは条件性弁別であろうか?―概念分析―. 帝京大学心理学紀要, 11, 1-8.

    次回に続く。