じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



06月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る


 ここ数日の間に、研究室と自宅のパソコンでWindows 10 Creators Updateのための再起動予約を促す画面が出現。いずれも「いますぐ再起動」としたところ、それぞれ3時間近くかかってやっと更新が完了した。画面には「処理にしばらくかかります」というメッセージが出たものの「しばらく」というのがどれくらい待たされるのかさっぱり分からない。「数分かかることがあります」というメッセージも実際には10分近くかかった。ま、別の作業をしていたので支障は無かったが、けっきょく、Windows 10 Creators Updateの新機能の中で、私に役立ちそうな機能は見当たらなかった【こちらの情報を合わせて参照】。しいていえば、定年退職後にヒマができれば、孫たちのために3D教材を作る楽しみがありそうな程度。そもそもEdgeは使っていないし、新着情報など全く不要。

2017年6月16日(金)


【思ったこと】
170616(金)ボーム『行動主義を理解する』(32)進化と強化(5)

 6月15日に続いて、

ボーム(著)森山哲美(訳)(2016).『行動主義を理解する―行動・文化・進化―』 二瓶社.

の話題。

 昨日の日記でも言及したが、「オペラント学習は、刺激と活動(activity) (系統発生的に重要な事象と、そのような事象の出現に影響を及ぼす行動)の関係によって生起する」というように「系統発生的に重要な事象」を強調した場合、習得性好子(習得性強化子、条件性強化子、二次強化子)の機能をどう説明するのかという疑問が出てくる。このことについては本書95頁では以下のように説明されている【長谷川による改変・省略あり。「条件性強化子」と「条件性弱化子」の訳語は、私の電子版教科書等ではそれぞれ、「習得性好子」、「習得性嫌子」と呼んでいる。】
 系統発生的に重要な事象(phylogenetically important events)だけが強化子あるいは弱化子ではない。レスポンデント条件づけによって系統発生的に重要な事象の信号となった刺激も、強化子や弱化子として機能する。レバーを押せば餌が出てくるという訓練を受けたイヌは、餌が対提示された音に対してもレバーを押すようになる。レスポンデント条件づけの関係によって、その音が餌の信号としての機能を持ち続ける限り、音はイヌのレバー押し反応を強化する。人々が食べ物だけでなく、金銭のために働く理由もそれと同じである。レスポンデント条件づけの場合のように、金銭は食べ物や他の商品と対提示される。強化子や弱化子が、このようにレスポンデント条件づけの結果となっているとき、それは獲得された(acquired) 【←「獲得」より「習得」のほうがいいかも】とか条件性(conditional)のものと呼ばれる。...【略】
 人間の社会では、条件性強化子や条件性弱化子となる事象は多くあり、多様である。それは文化によって違うし、ひとりひとり違う。
 なお私の電子版教科書3.2.4.で述べているように、同じ般性習得性好子といっても、純粋に交換価値だけに支えられているような道具型のタイプと、価値創出に相当するようなタイプでは、本質的に異なる機能や特徴がある可能性がある。
「注目」、「承認」、「愛情」、「従順」などの般性習得性好子は、何かと交換したり、数えられるようなモノではありませんし、交換期限がつけられているわけでもありません。同様に、金箔などの純金や宝石類、芸術作品なども、投機対象としての交換価値はあるものの、交換期限を過ぎると即刻価値を失うというようなものではありません。交換価値だけに支えられた紙幣は、革命が起こってその紙幣が無効化されたとたんにタダの紙切れになってしまいますが、金箔や宝石や芸術作品は、室内に飾っておくだけでも豪華な装飾になります。
 もとに戻るが、本書では、餌と対提示された音が習得性好子(条件性強化子)になるのは、その音が餌の信号として機能しているためであるというような説明がなされていた。しかしそうであるとするなら、弁別刺激はみな習得性好子になってしまうのではないかという疑問が出てくる。確かに、ジャングルで鳴り響く猛獣のうなり声は猛獣出現の信号でもあるし、習得性嫌子にもなりうるが、「落石注意」とか「転落の危険あり」、「出会い頭の衝突の危険あり」といった警告看板はそれ自体は習得性嫌子にはならない。早い話、丁字路にさしかかった時、直進すれば正面の壁に激突するだろうが、だからといって正面の壁は習得性嫌子にはならない。

次回に続く。