じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
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岡山では6月20日から21日にかけで合計23.5ミリの降水となった。6月7日に梅雨入りが発表されたもののその後は晴天が続いており、どうやら6月20日がホンモノの梅雨入りになりそう。 |
【思ったこと】 170621(火)ボーム『行動主義を理解する』(36)進化と強化(9) 6月19日に続いて、 ボーム(著)森山哲美(訳)(2016).『行動主義を理解する―行動・文化・進化―』 二瓶社. の話題。 本書104頁以降では、個体発生レベルにおける3つの「結果による選択」として、「変異」、「再現(recurrence)」、「分化的成功」が挙げられている。 1番目の「変異」というのは、行動分析学の教科書に基づくならば、分化強化されたり、シェイピングされていく場合の前提となる、行動のバリエーションが思い浮かぶ。行動の起こり方が固定されていて、変異が生じなければ、変わりようがない。もっとも、本書では、巨視的行動主義の立場から、もう少し大きな機能単位に言及している。「変異は、類似の目的の行為(私たちが問題にした例では、職場に行くのに車を運転するというのがある)の集団の中で起こる。」という例に示されているように、「職場に行くのに運転する」という行動単位があり、その中での変異が問題となっている。ただし、「自転車で職場に行く」とか「地下鉄を乗り継いで職場に行く」という行動までは含まれていないようである。 2番目の「再現」というのは、行動が繰り返し生じることである。たった一度限りの行動は、進化しない。(その可能性はあっても、再び行動が起こらなければ確認しようがない。) 3番目の「分化的成功」は、分化強化や分化弱化のことである。本書では、1番目の「変異」は巨視的に扱い、3番目のほうで分化強化や分化弱化が取り上げられている。 以上簡単に述べたように、3点は必ずしも独立したものではなさそうだが、系統発生における自然選択との類似点を具体化する上では有用と言えよう。例えば、系統発生における「遺伝子継承」に対応するのが「行動の繰り返し、習慣」であり、系統的適応度に対応するのが「分化強化と分化弱化」ということになる。ちなみに、自然選択が否定した古い「説明」は、神や創造主であった。個体発生における反応形成における古い「説明」は、「目的」、「意志」、「知性」などを説明に用いる心理主義であるとされている。 系統発生における自然選択と、オペラント行動における強化や弱化のプロセスには確かに類似性があるが、あくまでアナロジーのレベルの考察であって、すべてが対応するわけではあるまい。例えば、昨日述べた「異なる種の間の競争」というのは、オペラント行動ではあまり重視されないように思う。種間の競争は、どちらかが絶滅するまで続くか、何らかの棲み分けによって決着する。しかし、同一個体が生起させる行動の間では、まれに葛藤は生じるものの、大概は、すんなりと優勢な行動が起こるようになる。種間の競争と異なり、同一個体内での葛藤は、結果的に適応上不利益を招くからである。また、種間の競争の敗者はそう簡単には勝者に復活できないのに対して、同一個体内での行動は、ちょっとした状況変化により簡単に切り替わることがある。行動は消去されることがあっても「絶滅」することはない。 次回に続く。 |