じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
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座主川沿いのイヌビワ。ビワというよりイチジクのように見える(←実際、イチジク属)。ウィキペディアによれば、「ビワに比べ不味であることから「イヌビワ」の名がある。」と記されている。有毒ではないので、山で遭難した時には役に立つかも。
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【思ったこと】 170820(日)ボーム『行動主義を理解する』(63)刺激性制御と知識(13) 7月29日に続いて、 ボーム(著)森山哲美(訳)(2016).『行動主義を理解する―行動・文化・進化―』 二瓶社. の話題。 本書161頁からの「科学者たちの行動」では、「行動分析学の専門用語で言えば、科学的に観察するということは、弁別を形成するということである。"と論じられている。この場合の「弁別の形成」というのは、単に既存の刺激を弁別するばかりでなく、弁別刺激を作り出すように行動すると指摘されている。また、科学者は行動する有機体であるということ、そして、科学は他のオペラント行動と同じように、文脈と結果によって制御されるある種のオペラント行動であるということである。この枠組みから言えば、「創造性」というような特別な能力は必ずしも求められないし、「発見」と言っても特殊な行動の成果というわけではないと言える。 この章の終わりのほうでは、コンテクスト理論(contextualism)と行動分析学の類似性が指摘されている。コンテクスト理論では、「科学の理論と研究は、その時代と文化という文脈の中で理解されなければならない。この理論では、科学は客観的であるとか、価値判断に基づかないという見方をしない。その代わり、コンテクスト理論家たちは、理論も、そして科学者が思いつく実験でさえも、科学者が生活して育った文化的な環境の影響を受けるということを強調する。」とされている。この「コンテクスト理論」は英語では「contextualism」となっており、その中身をみても文脈主義と同じことを指しているように見える。となると、巨視的行動主義と機能的文脈主義はどこが違うのかという疑問も出てくる。 なお、ボームの英語第3版のグローサリーでは、 Contextualism:The view that scientific theories and experiments are influenced by cultural context and must be evaluated in the light of cultural context in which they occur.と説明されている。また、「機能」に関しては、「Functional unit」という項目があり、 Functional unit:A unit of measurement defined by its function or the job it gets done. In biology, a species is a functional unit, because the members of a species reproduce only with one another. In behavior analysis, an activity is a functional unit, because it is defined by consequences. In the laboratory, lever pressing is a functional unit, because it operates a switch attached to the lever. Giving a rule is a functional unit, because, despite the many variations in how it is given, it affects the listener's behavior the same way. Functional units contrast with structural units, which are defined by the way they look or are put together. Description of a movement by specifying the muscles involved, their order and extent, and so on would be a structural unit of movement. Structural units are useless for a science of behavior, because they may participate in any number of activities. Specifying the grammatical structure of an utterance, for example, tells us nothing of what the utterance, as verbal behavior, does.というようにかなり長文の説明があるが、機能的文脈主義については特に言及されていないようである。なお、章末では、 行動分析学の見方は、一般的にコンテクスト理論の見方に一致する。しかし、行動分析学の見方はそれだけではない。行動分析学の見方は、社会的な結果に加えて実用的な結果を強調し、社会的環境(すなわち、その集団における他者や、第7章で見ることになる言語共同体)が科学を形成する方法についても明確にしている。というように、行動分析学のほうがコンテクスト理論より広い視野を提供していることが強調されている。 次回に続く。 |