じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 170903(日)ボーム『行動主義を理解する』(68)言語行動と言葉(5) 8月30日に続いて、 ボーム(著)森山哲美(訳)(2016).『行動主義を理解する―行動・文化・進化―』 二瓶社. の話題。 翻訳書184頁からは「機能的単位と刺激性制御」の話題が取り上げられていた。基本は、言語行動も他のオペラント行動と同じように機能的に定義され、かつ、刺激性制御を受けるという点にある。 自分の席から離れたところにある塩をとってもらう際の言語行動は、「その塩を使ってもよろしいですか?」(疑問文)、「その塩を取ってください」(命令文)、「その塩を取っていただけるとありがたいのですが」(平叙文)などいろいろあり、文法的(構造的)には異なるものの同じ効果をもたらすので同じ言語活動になるとされている。ちなみに、ここでは「言語行動」でなく「言語活動」という言葉が使われている。いま私が執筆している論文でも、活動は、
Activity: A pattern of behavior that takes up time and is identified over a period of time, like reading, working, cooperating, or helping others. という定義になっている。 元の話題に戻るが、塩をとってもらう行動としては、他にも、相手の目を見て指で塩を指すだけでも十分であり、同じ言語活動に含まれるとされていた。 もっとも、「その塩を取っていただけるとありがたいのですが」という発話と、指で塩を指す行動が常に同じ結果をもたらすとは限らない。命令調の行動が相手に不快感をもたらすかもしれない。その場では塩を取ってくれたとしても、その後の人間関係を悪化させる恐れさえある。 また、このことにも関連するが、いくつかの依頼表現が聞き手に異なる影響を及ぼすのはなぜかといった問題も検討する必要がある。もちろんこれには慣用表現もある。多くの場合、依頼表現の影響は、文自体の構造ではなく、慣用に依存することが多いようにも思われる。例えば、「Can you 〜?」や「Could you 〜」は、構造的には、相手に対して「おまえは○○ができるか?」、「○○ができたか?」という能力を尋ねる表現のように感じられるが、慣用的には相手に失礼な表現とは見なされないようである。日本語の表現でも、「ありがとうございます」は元の「めったにない」という意味ではなく、もっぱら感謝の意味に使われている。 次回に続く。 |