じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 10月下旬にもかかわらず、台風が日本列島に接近している。10月19日に比べると10月20日のほうが、西寄りで、速度が速まる予想となっている。2014年10月下旬に被害をもたらした台風23号の例もあり、警戒が必要。

2017年10月19日(木)


【思ったこと】
171019(木)日本行動分析学会第35回年次大会(10)超高齢社会における行動分析学(8)巨視的視点(5)

 複数種類の行動がどのようにして「活動」というまとまりを形成するのか。今回のシンポでは時間的制約があり全く触れていないが、10月初めに投稿した紀要論文のほうでは、「非恣意的なまとまり」と「恣意的なまとまり」という形で少しだけ論じている。

 ここでいう「恣意的」というのは、活動に含まれる行動の入れ替えが恣意的に可能であるという意味である。但し「恣意的」といっても好き勝手に入れ替えられるわけではない。いっぽう、非恣意的というのは、物理的法則等によって、構成される行動の種類が必然的に決まってくることをいう。但し、非恣意的であるからといって生得的であるとは限らない。昆虫の活動は「非恣意的=生得的」であるが、脊椎動物であれば、少なくとも部分的に、経験の中で形成されると考えられる。

 以下、いくつか例を挙げる。

 まず、人間以外の動物における活動は、非恣意的なまとまりをもった行動から構成している。非恣意的というのは、活動を構成する行動を恣意的に入れ替えることができないという意味である。例えば、求愛ダンスのような行動を、「移動する」や「獲物を獲る」活動に含めることはできない。
人間の場合も、非恣意的なまとまりをもった行動から構成される活動はある。例えば、いま述べた「移動」活動の非恣意性は人間にも該当する。徒歩で向かう、自転車で向かう、タクシーを利用する、電車に乗る、...といった行動は「移動」という活動に含まれるが、読書行動やラジオ体操をする行動を含めることはできない。
 しかし、人間の場合は、活動に含まれる行動と含まれない行動を恣意的に入れ替えることもできる。例えば、受験勉強という活動の中に理科の勉強行動を含めていた受験生は、文系への志望校変更に伴い、それらの科目を除いた受験勉強をするようになるかもしれない。ボランティア活動として地元の清掃活動に参加していた人が、自然災害被災地の救援活動に参加するようになった場合、遂行される行動の種類は大幅に変わってくるだろう。
 さらに、1つの行動が別の活動に含まれる場合もあり、これまた恣意的に決定される。例えば、「徒歩通勤行動」は、「地球環境を守る活動」の1つに含まれる場合もあれば、「健康増進活動」の1つに含まれる場合もある。前者であれば、「徒歩通勤行動」は、「リサイクル行動」、「省エネ行動」、「クールビズ着用行動」などとともに活動を構成し、後者であれば、「野菜類をたくさん摂取する行動」、「受動喫煙被害を避ける行動」、「エレベーターを使わず階段を利用する行動」などとともに活動を構成する。但し、1人の人間が、「地球環境を守る活動」と「健康増進活動」の両方を遂行している場合は、「徒歩通勤行動」が2つの活動に同時に含まれる場合もある。
 種々の行動がひとまとまりの行動となるプロセスは、このように、非恣意的な制限を受ける場合と、恣意的に入れ替えたり付け加えられたりする場合がある。他の般化オペラントと同様、いずれも、幼少時において多数回の複数の範例による訓練(multiple-exemplar training)を経験することや、社会的影響の中で習得・形成されていくものと考えられる。

次回に続く。