じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 171203(日)加齢に伴い向上・維持する能力を発掘する(1) 東大・本郷で行われた表記のシンポに出席した。タイトルにあるように、今回のシンポでは、高齢者になっても比較的衰えない認知・記憶機能の「発掘」研究が紹介された。 いっぱんに、65歳、75歳、85歳、...というように歳を重ねるにつれて、知的能力も運動能力もおしなべて低下の一途を辿ると考えられてきたが、最近の研究によると、一部の機能はあまり衰えず、60歳〜65歳がピークになるような能力もあるらしいということが分かってきたという。また、円周率記憶の名人の中では、60歳をすぎても並外れた記憶力を示している人もいる。さらに、ある種の訓練に、衰えを防ぐ効果があるということも「発掘」されつつあるという。こうした最新の知見を収集することが参加の目的であった。 1番目の話題提供では、まず、75、80、85歳の地域在住高齢者を対象とした大規模なパネル調査の結果(一部未発表)が紹介された。大ざっぱに言えば、「見当識」や「遅延再生」課題では加齢による低下が顕著となっている一方、「計算と集中」課題は教育歴の影響が大きい。また、認知機能の領域では、教育歴の効果が大きい領域とそうでない領域があるというような内容であった。 少し前、民放の番組で、高齢者と現役東大生の記憶力を比較するというデモ実験を放送していたが、その中でも、制限時間内に「動物の名前をできるだけ多く挙げて下さい」といった記憶を引き出す課題では加齢の影響は顕著であるが、提示された言葉を、別の作業のあとで再認する課題(提示されていたかどうかをYES、NOで解答する課題)では、両群のあいだに殆ど差が無かったといった結果が示されていた。実際、私なども、よく知っているはずの固有名詞がなかなか思い出せないということはしょっちゅうある一方、テレビで紹介された数値などは、少なくとも数日程度は鮮明に覚えられることがあり、加齢による衰えに、顕著な部分とそれほどでもない部分があることを日々実感しているところである。 1番目の話題提供では続いて、社会参加活動と認知機能の関係について未発表のデータの一部が紹介された。シンポ終了時の質疑の中でも指摘されていたが、このあたりは因果関係の把握が難しい。社会活動に参加することに認知機能を高める効果があるのか、それとも、認知機能の高い人が積極的に社会参加しているのかは、単純な相関分析だけでは判明しないからである。というよりも、これらはニワトリと卵の関係のようなものであり、むしろ、スパイラル型の相互作用として捉えるべきであろう。 次回に続く。 |