じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 180221(水)ボーム『行動主義を理解する』(90)自由(5) 2月20日の続き。 本書250頁からは、罰的統制に代わる正の強化(好子出現の随伴性による強化)の可能性が論じられている。 違反をした運転手を罰する代わりに、良い運転をする運転手に報酬を提供しようとした共同体がある。ハイウェイ警察が、運転する私たちをときおり止めさせて、制限速度内で運転していたという理由で私たちに金銭を提供してくれたなら、私たちはハイウェイ警察についてまったく違った見方をするだろう。それは国家貨幣の節約になるだろう。職員の数は少なくて済むし、交通事故の裁判も時間がかからなくて済むだろう。さらに、人々は制限速度をこれまで以上に守ろうとするだろう。しかし、こうした、罰的統制に代わる正の強化による導入は、必ずしも、よりよい社会を実現させることにはならない。いっぱんに、好子出現の随伴性(正の強化)というのは、行動の直後に好子が出現する時に最も強力な効果をもたらす。どうしても、将来の幸福よりも、目先の利益を追い求めやすくなるという変化をもたらしやすいという特徴があるのだ。じっさい、成果主義はしばしばそういった弊害をもたらしている。短期的で目に見えるような成果ばかりを強化してしまうと、長期的な視点にたった大きな成果に目を向けなくなってしまう。競争原理も同様であり、目先の勝利ばかりを強化してしまうと、真の向上が得られず、時には、ライバルを追い落とすことで相対的な有意性を保とうとするといった、本末転倒の策略に転じてしまう可能性さえある。 次回に続く。 |