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【小さな話題】 さらば「校正」、さらば「締め切り」 某出版社から5月24日までに返送を求められていた校正作業をめでたく終了し、その日のうちに返送した。この校正は、在職中に執筆を依頼された原稿にかかわるもので、本来はすでに出版されているはずであったが諸般の事情により遅れているようであり、私にとっては隠居生活中にふってわいた現役一時復帰ということになった。校正は少なくともあと1回、再校の作業があるが、字句の修正程度で済むため、短時間で完了するはずである。ということで、これが私にとって人生最後の「校正」となった。 私より先に退職された先輩諸氏の中には、退職後も生涯現役者として執筆を続けている方もおられるが、私自身は少なくとも印刷媒体の書物を刊行する計画は全くない。(すでに引退を表明しており、すべての学会を退会しているのでありえないことだが)仮に執筆依頼があっても今後はすべてお断りする予定である。 何かを書くということについては、このWeb日記の執筆からも示されるように今後も継続する予定である。また、いずれまとまった内容の文章をWeb上で公開するかもしれない。但し、(印刷業者の方にはまことに申し訳ないが)私は、印刷媒体での書籍というのはすでに時代遅れであると考えている。印刷物となればそう簡単には修正できないし、文字数の制限もかけられる。何よりも保管に場所をとるし、しだいに色あせてボロボロになっていく。じっさい、定年退職後のいままさに、私が保有する印刷文書の大部分をPDF化して、紙媒体はシュレッダーにかけているところである。 校正作業完了とともに、私の人生からは「締め切り」という語彙も消えつつある。もちろん、何かの申し込み期限とか、頼まれたことを期日までに終わらせるということはこれからも何度もあるかもしれないが、何日も締め切りに追われるということはこれからはあり得ない。 念のため言っておくが、締め切りを設定するということは必ずしも悪いことではない。人間のサガというか、強化随伴性の基本原理というべきか、とにかく、締め切りが無ければ面倒なことは先延ばししてしまう。結果的に、努力の積み重ねを必要とするような大きな課題は達成できなくなってしまう。 とはいえ、私の場合、今のところ日々の活動は結構充実しており、締め切りをつけなくても、それなりに「成果」が上がっている。今後、活動の優先順位を調整する必要があるとすれば、深刻な病気にかかって余命いくばくもないことが判明したような場合であろう。そうなれば否が応でも、死という締め切りに間に合わせるような準備を完了させる必要が出てくる。 |