じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 ネガフィルムのデジタル化を進めていたところ、大学院生・研究員時代に実験室前で撮った写真が見つかった。当時から実験室前の空き地で勝手に花を育てていたようである。

2018年6月22日(金)


【小さな話題】

細胞から見る病気のしくみ

 6月20日に放送された、

又吉直樹のヘウレーカ!「“お前はもう死んでいる”ってホント?」

を録画・再生で視た。

 番組の初めのところでは、人間の細胞の数、ウイルスや体全体との大きさ比較が行われた。

 1人の人間を構成する細胞の数は、かつては60兆個と言われていたが、最近の研究では37兆個であると推定されているそうだ。このうちの22兆(全体の約6割)は赤血球細胞であるが、この寿命は約4か月、胃や腸の粘膜の細胞の寿命は約4週間であるという。また髪の毛は死んだ細胞(細胞の抜け殻)から構成されている。なお、今回の番組では取り上げられなかったが、脳の神経細胞や心筋細胞の寿命はその人の寿命と同じであり、修復されたり復活再生されることはない。私自身の脳の中でも日々死滅する一方である。

 ということで、番組タイトルの「もう死んでいる」というのは、生きている人の体も部分的に見れば死んでおり、かつ、常に潰れながら作られる部分と、生まれた瞬間から死に至るまでのあいだに少しずつ死滅していく部分から構成されているという意味で真実であると言えよう。

 次に取り上げられたのはウイルスの大きさについて。ノロウイルスの大きさは直径が30ナノメートルであり、これを米粒1個に喩えると、人間の細胞の大きさは2メートルほどの球体(米粒の長径は6ミリメートルなので、10マイクロメートルの細胞は333倍なので1998ミリ=約2メートル)。この比率でいうと、大人の身長は東京・名古屋間の長さに相当するというから、文字通りの「桁違い」よりもはるかにかけ離れた大小比較ということになる。

 このあと、病理学に基づく、風邪や癌のような病気がなぜ起こるかという説明があった。

 まず、一般に風邪と呼ばれるものは200種類以上のウイルスによって引き起こされる上気道感染症の総称であり、1種類ごとのウイルスに対しては免疫が形成されるものの、種類が多いために何度も風邪を引くことになるという。風邪をひいいた患者さんと日々接しているお医者さんや看護師さんに風邪がうつらないのは、あらゆる種類のウイルスに免疫ができているためかもしれない。

 いっぽう、癌のほうは、細胞分裂の際のミスによる突然変異であり、年を取れば必然的にその確率が増えていく。癌の罹患数や1985年に約33万人であったものが、2013年には約86万人に増えているが、これは、癌のリスクが増えたためというより、医療の進歩によって癌以外で死ぬ人が減って長生きする人が増えたためと考えられる。じっさい、1965年、1990年、2015年における癌による年齢別死亡率を比較すると、70歳くらいまでの死亡率は変わらないかむしろ減少、70歳を超えたあたりからは死亡率が急激に増えていることが見て取れる。いまや、日本人の2人に1人は癌になり、3人に1人は癌で亡くなる時代となった。

 癌を起こしやすくする要因としては、タバコ、ピロリ菌、紫外線、放射線、太りすぎ痩せすぎなどがあるが、これらを避けたからといって完全に予防できるわけではない。自分でできることはやって確率を下げるとしても、あとは、人間とはそういうものだとして受け入れるしかないのかもしれない。

 番組の終わりのところでは、遺伝子検査のメリット、デメリットが取り上げられていた。癌について言えば、アンジェリーナ・ジョリーさんの例に見られるように、BRCA1とBRCA2の変異を併せ持つと生涯罹患率が80%以上に跳ね上がることが分かっているケースも知られている。しかし、遺伝子検査によってある人が癌家系であると分かると、その結果は、検査を受けていない親族にも知れ渡ってしまい、場合によっては不安を拡散させる恐れが出てくる。個人単位で見ても、将来かかりやすい病気や余命が分かってしまうことは、必ずしも人生設計にプラスに働くとは限らないという問題がある。

 仲野先生が言っておられたように、遺伝性の癌というのはせいぜい5〜10%に過ぎない。自分が癌家系ではないと判明しても、非遺伝性の癌で死ぬ確率は変わらないので、安心材料にはならないだろう。

 ま、とにもかくにも、人は必ず死ぬものであるゆえ、長寿をめざすことには限界がある。健康寿命を延ばすために最大限の努力は続けるとして、あとは、常に身辺整理に心がけ、覚悟を固めておくことが肝要かと思う。