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8月14日夕刻の月と金星。月齢は3.0。金星はマイナス4.3等。今後、金星の高度はしだいに下がっていくが、光度のほうは9月21日のマイナス4.6等になるまでますます明るくなっていく。 |
【連載】宇宙大作戦(スタートレック)を振り返る(3)貧弱なセットとワンパターンの展開でも面白い理由 昨日も述べたように、テレビドラマの宇宙大作戦(1966年〜1969年、「TOS」、Star Trek: The Original Series)は、当初米国で放送された際には視聴率はあまり上がらず、制作予算削減による内容の質的低下の悪循環に陥っていたようである。 ドラマの大半は、ブリッジ(操舵室)とそこに映し出されるスクリーン画面、転送ルーム、医療室などと、上陸地点(たいがいは周りに岩がある)、基地あるいは現地の住民の建物などに限られている。時たま野外でのロケも行われているが、これまた岩山の多い地形で、違う星であるにもかかわらずいつも同じような風景になっている。このほか、同型の宇宙船や、パラレルワールド、異星人がカーク船長を騙すために作った同型のエンタープライズなどが出てくるシーンもあるが、同型という前提であればセットを作り返す必要はない。これまた制作コスト削減に貢献しているように思われる。 いっぽう、ストーリーのほうも、似たような展開が使い回しされているという印象を受ける。よくあるのは、
にもかかわらず、このドラマが面白いのは、ドラマの魅力が、カーク船長、スポック、マッコイの3者それぞれの強烈な個性のぶつかり合いに依拠しているためではないかと私は思う。その証拠に、少なくとも私は、この3者が「引退」した後のスタートレックには全く魅力を感じていない。8月12日に言及した2009年の映画も、ドラマと同一の登場人物の若い時の活躍が描かれているから面白いのであって、登場人物が全く異なるSF映画であったら殆ど興味を持たなかったと思われる。 50年も前に制作されたドラマについて、特撮技術の不完全さをあれこれ言っても始まらない。むしろ、セットは能舞台のようなものであると考え、冒頭の航星日誌[※]の読み上げなどを通じて、観客はそれに相当する場面を想像しながらドラマを楽しむのである。ちょうど、狂言で、役者が自己紹介したり、舞台を廻って離れた場所への移動を表現するかのように、この宇宙大作戦でもいくつかの約束事がある。例えば、ブリッジが大きく揺れて照明が点滅するシーンがあるが、これは、エンタープライズが強い攻撃を受けているという約束事のシーンであって、いくらウソっぽく大げさに見えても、約束事は約束事として受け止めるほかはないと思う。 [※]日本語のナレーションの「こうせいにっし」は「恒星日誌」だと思っていたが、星と星の間をめぐる航海日誌である以上「航星日誌」とするのが妥当であろうと思われる。なお、映画版「スタートレックIV」の日本語字幕は「恒星日誌」になっていた。 上述のワンパターンの展開についても、エンタープライズの使命やカーク船長の役割を前提とすると、制作予算削減の中でギリギリまで頑張ったという気がしないでもない。宇宙を旅する物語としては、例えば、銀河鉄道999のアニメがある。こちらは全113話(+ テレビスペシャル3話)で宇宙大作戦の79話より遙かに多く、内容も豊富である。その理由は、銀河鉄道のほうが、鉄郎の個人の体験、他者との交流を取り上げていたためであり、いくらでも話題を増やすことが可能な設定となっていた。宇宙大作戦のほうは、個人レベルの交流ではなく、宇宙船と異星人との公的な接触という背景が設定されていたため、個人レベルの話題に深く入り込むと公私混同のように見えてしまうという限界があった。 不定期ながら次回に続く。 |