じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 東海道・山陽新幹線の車内電光掲示板の英文メッセージでは、途中の停車駅を「We will be stopping at ○○, ○○, and ○○ stations before arriving at ×× terminal.」というように表示され「station」は複数形となっているが、残り1駅になると当然単数形の「station」に変わる。写真は、のぞみ下りの広島駅発車後のメッセージ。停車駅は小倉駅のみなので単数形になっていた。↓に関連記事あり。

2018年8月29日(水)



【連載】
日本語と英語の違いをめぐる議論(1)新幹線車内メッセージに見られる英語と日本語の違い

 昨日の日記で、金谷武洋氏が論じる、

●英語の発想は誰かが何をした、という行為文中心の「する言語」、日本語はそうではなく、何かがどういう状態でそこにあるという存在文中心の「ある言語」である。

について取り上げた。私は言語学の専門家ではないし、学問として文法理論には興味はない。重要なことは、日本人が英語を学ぶ場合、あるいは逆に外国人が日本語を学ぶ場合、どういう教程と内容を構成すればより有効性が高められるのか(より短時間に、より自然な表現を習得できるのか)という点にある。ある表現が文法的に正しいかどうかという議論が無駄であるとは思わないが、もっと必要なことは、どういう表現がより「自然な」英語や日本語になるのか、またそれはどういう理由によるものかがちゃんと説明できることである。

 このことに関連するが、新幹線車内の電光板に表示される(もしくはドナ・バークさんの音声)英語メッセージは、英語と日本語の発想の違いを明確に示しているように思われる。こちらのサイトほかを参考にしながらいくつか抜き出してみると、
  1. We will be stopping at Shin-Yokohama, Nagoya, and Kyoto stations before arriving at Shin-Osaka terminal.
  2. Please refrain from smoking in the train including areas at either end of the cars.
  3. If you notice any suspicious item or behaviour, notify staff immediately. 
  4. 【500系限定】This train has no exits at the front of car number 1 , nor at the rear of car number 8.
これらは、日本語に直訳すると、
  1. 私たちは終着新大阪に到着する前に、新横浜、名古屋、京都の各駅に停車します。
  2. デッキを含めて、タバコを吸うのはお控えください。
  3. もしあなたが不審な物体、もしくは行動にお気づきになりましたら、直ちに乗務員に通報してください。
  4. この電車は、1号車の前側と8号車の後ろ側に出口を保有していません。
といった感じになるが、いずれも「自然な」日本語とは言えない。実際にどういう日本語が流れているのかは確認できていないが【いずれここに追記する予定】、上掲の4文をより自然な日本語に置き換えると以下のようになるのではないかと思う。
  1. 終着新大阪までの停車駅は、新横浜、名古屋、京都です。
  2. この電車はデッキを含めて全席禁煙です。
  3. 車内で不審な物体や不審な行動がありましたら直ちにお知らせください。
  4. この電車の1号車前側と8号車後ろ側には出口がありません。
要するに、「する言語」の英語表現を「ある言語」の日本語に置き換え、「する言語」にあった動作主体の代名詞を消去すると、より「自然な」日本語になるのである。
 いっぽう「ある言語」の日本語を英語に翻訳する際には、主語を明確にし、「する表現」に置き換える必要がある。例えば、上掲の1.については、「The stops to Shin-Osaka are the Shin-Yokohama, Nagoya and Kyoto.」という「ある」英語でも文法的には正しいかもしれないが、いかにも機械翻訳的と言わざるを得ない(←じっさい、これはGoogleの機械翻訳による英語)。