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台風21号は、9月4日5時45分現在、足摺岬の南約190kmにあって、時速35kmで北に進んでいる。中心気圧は945hPaで「非常に強い」勢力を維持している。8月31日時点での進路予測(画像右)に比べると、やや西寄りのコースをたどっており、近畿地方への影響が心配される。なお、岡山市でも9月4日04時22分に暴風・波浪警報が発令された。 |
【連載】 日本語と英語の違いをめぐる議論(4)食堂での会話と文脈 少し間が空いてしまったが、8月31日に続いて日本語と英語をめぐる話題。 前回も述べたように、言葉は日常会話が基本、書き言葉は後から発展したというのが私の考えである。これは、言語がまず集団内での交流・協力の中で会話行動として確立し、文字の発明とともに、書き言葉として発展していったという経緯からも分かるし、個々人が母語を習得する際にまず家族内のコミュニケーションを通じて話し言葉を身につけ後に読み書きを習うというプロセスからも見て取れる。 もっとも、前回も述べたように、コミュニケーションというのは、特定の文脈の中で交わされるものであり、言葉はコミュニケーションツールのごく一部に過ぎないという点に留意する必要がある。つまり、「○○をください」というように目的が同じであっても、そこで使われる言葉は文脈によって変わる可能性がある。 ここで、食堂で何かを注文する場面を考えてみよう。 このことで私がまず思い浮かべるのは、岡山駅近くにあったラーメン屋さんでの注文場面である。このラーメン屋さんのメニューは、1杯500円のラーメンのみであり餃子やライスなどは提供されていない。なので、店内に入って座っているだけで、黙っていてもラーメン1杯が運ばれてくる。店の人が「いらっしゃい」といって水を運んで来た時に、「お願いします」とか、指1本出して「ひとつ」という人もいるが、別段、黙っていても無視されることはない。要するにこの店内においては、「店内に入った人はラーメン1杯を注文する」ということが自明であり、言葉を通じてコミュニケーションを交わす必要が無いのである。 いっぽうラーメン屋の中でも、ゆで方、麺の太さ、大盛の注文ができる店もある。この場合は、注文時に「固め」、「太いほう」、「大盛で」といった言葉を発する必要がある。これらは、名詞か形容詞1単語で済ませることができる。 次にいろいろな料理を提供している食堂の場合は、メニューを見ながら注文を出していく必要がある。これも通常は、「親子丼」、「ウナギ丼」、「ざるそば」、...というように名詞1単語で住む。「どうか、このお店で、本日この時間に、私に親子丼を1杯ください」などと言う必要はない。 何人かで連れ立ってレストランを訪れた時は、誰がどれを注文したのかをとりまとめる必要がある。文法談義でよく登場する「ボクはウナギだ」という表現はこの文脈であれば自然な表現となる。 ところで、上記で、店員との会話場面で注文をする際には、「親子丼」、「ウナギ丼」というように名詞1単語だけでも済むと述べたが、店員に水やお茶の追加を頼む際には、「水ーっ!」とか「お茶っ!」というのは失礼な表現となる。料理の注文場面と異なり、水やお茶の追加を依頼する場面では、まだ文脈が醸成されていないからである。要するに、注文することが確実な文脈のもとでは、「親子丼」という名詞1単語の発話は失礼には当たらないが、店内で食事中、水やお茶の追加を依頼するというのは、必ずしも固定された文脈とは言えないということである。さらに言えば、公園で喉が渇いた時に、水筒を持っている見知らぬ人に対して水をください依頼するような場合は、言葉遣いばかりでなく、身なりや表情、しぐさなどにも配慮して、「突然失礼します。水を一杯分けてくれませんか」などと丁寧にお願いする必要がある。なぜなら、公園内は、見知らぬ人から水をもらうという文脈からは全くかけ離れているからである。(公園内でマラソン大会が行われていて、給水所で水を受け取る場合は除く。) 不定期ながら次回に続く。 |