【連載】
関係反応と関係フレームをどう説明するか(13)「関係フレーム」とは何か?(2)
1月3日の続き。
前回の最後の引用のところで、RFTのパープルブックに
- 名詞形の「フレーム」は便宜的な表現であり、その実態は反応であること。
- 「フレーム」はメタファーであること。非恣意的な関係反応と異なり、空っぽであること。
という記述があることを引用させていただいた。なお、「パープルブック」というのは、Dymond & Roche 編(2013).『
Advances in Relational Frame Theory Research and Applocation.』の序文に以下の記述があったことに基づく。
It is now more than 10 years since the publication of the first book on Relational Frame Theory (RFT; Hayes, Barnes-Holmes, & Roche, 2001), now affectionately known as "the purple book".
上記の「フレームはあくまでメタファーである」という点については、トールネケ(2013)にも同様の記述がある。【箇条書きに改変】
- 本章で説明されているような特有の仕方で関係づけを行うことは,関係フレームづけ(relational framing) と呼ばれる。より専門的な用語を使うと,恣意的に適用可能な関係反応(arbitrarily applicable relational responding ; AARR) となる。この行動は,般化オペラントである。
Relating in the particular way described in this chapter is termed relational framing. A more technical term for this is arbitrarily applicable relational responding (AARR). This behavior is a generalized operant.
- この「般化」という用語は,特定の行動が,トポグラフィーによる記述【で】はなく,機能的な意味においてのみ記述され得ることを強調することが重要な場合に,オペラント行動を説明するためによく用いられる。
The term "generalized" is often used to describe operant behavior when it is important to emphasize that a particular behavior can only be described in a functional sense, and that it completely lacks topographical description.
- このような般化オペラント行動の例としては,ほかに,「模倣」や「新しい何かをすること」などがある。これらのカテゴリーには,どのような行為でも当てはめることが可能で,それは行為の見かけやトポグラフィーによらない。関係フレームづけもまた,この種の行為(般化オペラント行動)に含まれる。
Other examples of such behavior are "imitation" or "doing something novel. Any type ofaction could belong to these categories, regardless of its appearance or topography. Relational framing is also this type of action (generalized operant behavior).
- 私たちが,物事をさまざまな種類の関係(反対,比較,空間的,時間的など)でフレームづけすると語るとき, 「関係フレーム」という用語はメタファーである。それは,フレームというものが,何でも含めることができるということを引き合いに出したものである。この用語は,関係フレームが精神的な対象物として存在するということを意味するのではない。
When we speak of framing things in different types of relations (opposition, comparison, spatial, temporal, and so on), the term "relational frames is metaphoric. It refers to the way a frame can contain anything. This term does not imply that relational frames exist as mental objects.
- 関係フレームは,人々がさまぎまな種類の関係のなかに物事を位置づけることができることを表現するための方法である。つまり,私たちは,物事をフレームの中に当てはめるのである。
It is a way of saying that people can put things in various types of relations; that is, we place them inside frames.
- 明らかに,当てはめるというのも,メタファーである。この関係づけは,関係づけられる刺激のいかなる形態的,あるいは物理的な性質にも基づかない。むしろ,これらの関係は,人間の行動の特有の現れの結果としてもたらされるものであり,それは文脈手がりによって支配されている。関係フレームづけは,人間が人生のごく初期に,オペラント条件づけを通じて学ぶ行動であり,すでに言及した3つの現象によって特徴づけられる。
Obviously, the placing, too, is metaphorical. This relating is not based on any formal or physical properties of the related stimuli; rather, the relations come about as a result of this specific form of human behavior, which in turn is controlled by contextual cues. Relational framing is a behavior that humans learn early in life, through operant conditioning, and is characterized by the three phenomena I have already mentioned: 【以下略】
私個人は、「フレーム」というメタファーよりも、般化オペラントという呼称に徹することのほうが分かりやすい。昨日引用させていただいた武藤(2011)に
「
この「フレーム」という名称は,認知的な構造のように誤解される危険性があるため,それを避けるためにフレーミング(framing) と呼ばれることもある。」と記されているように、どうしても、頭の中のどこかにフレームという装置があるように思えてしまって、しっくりこないところがある。
ところで、上掲のトールネケの引用では「関係フレームづけ(relational framing) =恣意的に適用可能な関係反応(arbitrarily applicable relational responding ; AARR) 」というように読み取れるが、パープルブックのほうでは、
We use the term relational frame in its noun form for the sake of convenience; however, a relational frame is always “framing events relationally” ― it is an action. Arbitrarily applicable relational responding is the generic name for behavior of this kind, while a relational frame is a specific type of such responding.
となっていて【下線部は長谷川による】、関係フレーム(フレーミング)は「恣意的に適用可能な関係反応(AARR)」という総称の中で、特定の特徴を持ったタイプであると説明されている。このあたりの違いは少々気になるところだが、もう少し他の章の記述を参照してみないとよく分からない。素朴に考えると、AARRが起こるからといって、必ずしも派生的な反応が起こる(般化する)という保証はない。相互的内包、複合的相互的内包、刺激機能の変換が確認された場合に関係フレーム(フレーミング)が確認されたというように解釈するということではないかと思われる。
不定期ながら次回に続く。
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