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【連載】チコちゃんに叱られる!「なぜ、自転車に左から乗る?」 3月15日放送のNHK 「チコちゃんに叱られる!」の感想。 今回は、「なぜ、自転車に左から乗る?」という話題を取り上げることにしたい。この疑問への解答は「左足が支える足だから」であり、じっさい、警察(公安委員会)では、「交通事故防止のため、左側から乗りなさい」と指導しているそうである。 解説をしてくださったのは、関西福祉科学大学学長の八田武志先生であった。八田先生によれば、人間の足には動作をする「利き足」とからだを支える「軸足」があるが、大概の人は、左足が軸足であり、NHKホール来場者に協力してもらった片足立ち実験では28人中22人が左足の時のほうが長く立つことができた。また1984年ロサンゼルスオリンピックの平均台競技で着地の足を調べると16人の選手全員が左足から着地していたという。 八田先生によれば、なぜ左足が軸足になりやすいのかは、赤ちゃんがお腹の中にいる時の姿勢に起因している。妊娠8〜9カ月になると2/3の赤ちゃんは左耳がお母さんの背骨側に向く姿勢になっているので、お母さんが歩くと背骨側の左耳に強い刺激が加わり、左耳の三半規管がより発達し、バランスを上手にコントロールできるようになるという(なので、赤ちゃんの姿勢が逆で、右耳が背骨側を向いていた時は軸足が右足になる)。 以上が番組の概要であるが、八田武志先生のお名前は私が学部生のころから存じ上げていた。私は文学部心理学であったが、一時期、教育学部・教育心理学のS先生のゼミに参加させていただいたことがあった。S先生はこの時期、ラテラリティに強い関心を持っておられて、ゼミで、左右の手の指を交互に組み合わせた時にどっちの親指が上に来るかという比率が理系と文系の学生で異なるかどうかといった話題が取り上げられたこともあり八田先生のお名前もたびたび登場した。 もっとも文学部心理学のほうではラテラリティ研究には冷ややかな目を向ける傾向があった。理由は、それが心理学的にどういう意義があるのかというものであった。 ここからは私自身の見解になるが、私自身も以前から、自転車やバイクに乗る時に、左右どちら側から乗る人が多いのかということには興味をいだいていた。私が考えたのは、日本では自転車やバイクは左側通行であり、バイクを駐輪する時は、車道の左端に駐めて、バイクの左側から乗降するように習慣づけられているというものであった。(自転車は歩道に駐めるのが一般的であるが、歩道の無い道路では左から乗降したほうが後ろからくる車にぶつかりにくい。) でもって、もし私の仮説が正しいならば、バイクや自転車が右側通行となっている国では、右側から乗降する人が多いのではないかということになる。また、もしそうでなくて、左が軸足であるために左側から乗降するというのであれば万国共通の傾向になるはずである。この場合、右側通行の国であっても道路の左側に駐輪する比率が多くなるという可能性もある。 ということで、海外旅行に出かけるたびに注意は向けているのだが、他の景色に目を奪われたりしているうちにちゃんと集計するのを怠っていて未だに結論は出ていない。 左右の問題は、20年ほど前、人間界の左と右というテーマで連載したことがあった。これを機会に、リンク切れ部分を修正したいと思っている。 |