じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 4月18日その翌日の楽天版に、半田山植物園に生息しているユキモチソウの写真を掲載した。ユキモチソウの仏炎苞下部は写真左【サムネイルをクリック】のように真っ黒になっていると思っていたが、17株のうち1株だけ写真右のように茶色で縦縞の入っている株のあることに気づいた。日にちが経っても色が変わることはない。来年以降にどうなるのか今から楽しみ。

2019年4月22日(月)




【連載】チコちゃんに叱られる!「なんでジャンプしても地面に戻ってくるの?」

 4月19日放送のNHK 「チコちゃんに叱られる!」の話題。本日は、4番目に取り上げられた、

●なんでジャンプしても地面に戻ってくるの?

という疑問について考えてみることにしたい。番組では「時空のゆがみに引っ張られるから」が正解であるとされた。

 解説をしてくださったのは、東京大学・カブリ数物連携宇宙研究機構長の大栗博司先生であった。この先生は、少し前、NHK・Eテレの

こころの時代〜宗教・人生〜 アンコール 唯識に生きる 第5回「唯識の科学性」

で、科学とは何かについて明解な解説をしてくださったことがあった。

 さて、今回の疑問で問題となったのは「重力とは何か?」ということであった。

 番組ではまず、ニュートンの万有引力の法則について、
リンゴが木から落ちるのは、地球が一方的にリンゴを引っ張っているからではなく、リンゴも地球もお互いに(=万有)引っ張り合っている。
というように説明していた。もっとも、多くの人はいまだに、地球上の人や物は地球に一方的に引っ張られていると考えているようである。しかしそのように誤解していても日常生活上は全く支障がない。大栗先生によれば、人間の重力は地球の重力のおよそ1000垓分の1の強さしかないので、すれ違った人間どうしが引っ張り合って衝突するというようなことは起こらない。

 少し前の話に戻るが、ウィキペディアでは、ニュートンの万有引力の発見について以下のような誤解があると指摘している。
ちなみにニュートンによる「万有引力の法則の発見」を“重力の発見”だと解釈してしまう例があるが、これは間違った解釈である。「リンゴが木から落ちるのを見て、ニュートンは万有引力を発見した」などとする単純化された巷に流布している逸話も、この誤解を広める原因になっている可能性がある。ニュートンは「リンゴに働く重力」を発見したわけではない。「リンゴに対して働いている力が、月や惑星に対しても働いているのではないか」と着想したのである。地上では物体に対して地面(地球)に引きよせる方向で外力が働くことは、(ガリレオなどの貢献もあり)ニュートンの時代には理解されていた。ニュートンが行った変革というのは、同様のことが天の世界でも起きている、つまり宇宙ならばどこでも働いている、という形で提示したことにある(そして同時に、地球が物体を一方的に引くのではなく、全ての質量を持つ物体が相互に引き合っている事と、天体もまた質量を持つ物体のひとつに過ぎない事)。「law of universal gravitation 万有引力の法則」という表現は、それを表している。
 ここからはあくまで私の考えになるが、ニュートンは別段、「ここに重力がある」というような形で証拠物件を提示したわけではない。「万有」という時の「有」というのは、質量のある物体間の間に働く力を関係式によって示すことによって確認されるのである。これは、「心」とか「意識」についても言える。「心」や「意識」が実在するかどうかという議論をしても生産的な結論は見出せない。重要なことは、万有引力の法則と同じように、行動の関係式をはっきり示すことである。その関係式の中に、結果として、心や意識という変数あるいは定数を含めなくて済むならば、心や意識は冗長な概念ということになる。スキナーが『科学と人間行動』の中で指摘しているように、パヴロフの条件反射の原理が画期的であったのは、条件反射という現象を、「心」や「期待」といった変数を含めずに、刺激の強さや対呈示の回数などと唾液分泌量との関係式で示せたという点にある。

 もとの話に戻るが、「なんでジャンプしても地面に戻ってくるの?」を説明するだけであれば、ニュートンの万有引力の法則であっても、アインシュタインの「時空のゆがみ」であっても、説明力に大した違いはないように思う。じっさい、番組ではアインシュタインを紹介したものの、そのあとの説明は再び「石やりんご、あなたや私、地球や星、全ての物が引っ張り合う力を持つ」となっていて、ニュートンの万有引力に基づく説明に戻っていた。

 ウィキペディアにも記されているように、現在では「重力」は、
重力とは、その物体の質量によって生じる時空の歪みが他の物体を引き寄せる作用のこと。
として定義されているようであるが、この定義が、ニュートン時代の
重力とは、質量を持つ物体どうしがお互いを引き寄せる作用のこと。
という定義と比べて斬新な説明力を持つかどうかは、
  • 時空という概念をより一般化して包括的に説明できる。
  • 宇宙で起こっている不可解な現象を説明したり、予測することができる。
といった点にかかっているように思う。いずれにせよ、「ジャンプしても地面に戻ってくる」という現象だけであれば、ニュートンの公式だけで充分であり、時空の歪みを持ち出す必要はない。

 このほか番組では「北極・南極で体重50kgの人は、赤道では150g軽くなる」というような話をしていたが、このネタは雑学系番組で何度か耳にしたことがある。じっさい、日本の体重計は、北海道用、沖縄用、中間用の3つ、病院施設などではさらに細かく調整されているという。タニタの体組成計のトリセツにも、
高精度のはかりは、使用地域により重力の影響を受け、誤差を生じることがあります。ご使用になる地域を設定することにより、この誤差を解消することができます。
という記述があり、全国を5地域に分けて地域番号を入力するようになっている。